2009 Fiscal Year Annual Research Report
照射分子欠陥を導入した強相関係有機導体におけるキャリア数制御とモット臨界性
Project/Area Number |
20340085
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 孝彦 Tohoku University, 金属材料研究所, 准教授 (20241565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米山 直樹 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 助教 (80312643)
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Keywords | 公子性導体 / モット絶縁体 / 光学伝導度 / エックス線照射 / キャリアドープ / 有機超伝導体 |
Research Abstract |
本年度は,物品費で新たに導入した本研究の主要装置であるエックス線照射装置と照射中電気抵抗測定装置の立ち上げを行い,これを完了した.本装置を用いることによって有機伝導体試料へのエックス線照射実験を効率的に行えるようになった.本装置によって系統的にエックス線照射を行った有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]Brの電気抵抗の温度依存性を測定した結果,照射分子欠陥による電子散乱の増加に伴う超伝導-局在絶縁体転移を見出した.この転移では低照射量では超伝導転移温度が低下し残留抵抗が増加するが,あるしきい照射量でほぼ温度に依存しない抵抗の温度依存性が観測された後に,高照射量領域では絶縁体的温度依存性を示すようになる.このしきい照射量における温度に依存しない電気抵抗率の大きさは,ほぼ2次元最小金属伝導度の値と一致する.高照射量の絶縁体状態において,高温度域ではアレニウス側に従う抵抗の温度依存性がみられるが低温になると局在絶縁体に特徴的なべき指数を有する温度依存性に変化することがわかった.また中間温度域では最近理論的に示唆されている電子相関と短距離クーロン力が働いたソフトギャップ状態が形成され,低温になるにつれてクーロン力が長距離的になっていく様子が実験的にはじめて観測された.また圧力印加によるバンド幅制御を行った結果,局在絶縁体から金属状態への転移が観測された.この結果は乱れによる電子局在に電子相関効果が働いていることを実験的に明らかにしたものである.
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