2011 Fiscal Year Annual Research Report
有機導体β型DMeET塩における非線形伝導と隠れた準安定状態の機構解明
Project/Area Number |
20340087
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 初果 東京大学, 物性研究所, 教授 (00334342)
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Keywords | 分子性物質 / 強相関電子系 / チェッカーボード型電荷秩序 / 電場応答 / 巨大非線形伝導 / 電場誘起準安定状態 / ラマン分光 / 電荷秩序揺らぎ |
Research Abstract |
本研究課題では、室温ではダイマーモット相であるが、温度低下と共にダイマー内で電子分極を起こし、75Kで3次元的に揃ってチェッカーボード型の電荷秩序相を発現するなど、ダイマーモット相と電荷秩序相が競合する新規強相関系分子性導体表題の有機導体β-(meso-DMeET)_2PF_6を対象としている。これまで、表題物質に電場を印加すると、電場誘起の準安定状態が出現し、さらに時間分解のラマン分光測定で準安定状態のみの電子状態を調べたところ、電荷秩序が融解して(揺らいで)いることが明らかとなっている。 本年度は、(1)表題の基底状態を明らかにし、(2)放射光の照射でも、励起状態が出現することを見出した。前者(1)では、高品質の結晶作成に成功し、6mgの単結晶を集めて静磁化率、および1個の単結晶でESRを測定したところ、電荷秩序化に伴い、金属-絶縁体転移を起こす75Kでスピンギャップが開き、2次元スピンパイエルスともいうべき特異な相転移でシングレット化することが明らかとなった。この結果より、クーロン斥力だけでは説明できないチェッカーボード型の電荷秩序を形成する要因が、スピンシングレット化にあることが示された。後者(2)において、実験室系では電荷秩序を示す超格子が出現するが、強度の強い放射光で一晩照射すると超格子が消失する励起状態が出現することが明らかとなった。この光励起状態は、電場による励起状態と関係が有ると考えられ、準安定状態が、電荷秩序の早い揺らぎであることが示唆された。
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