2011 Fiscal Year Annual Research Report
スピン偏極励起原子ビームを用いた分子内局所磁性による立体ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
20340102
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岸本 直樹 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (60302080)
|
Keywords | 電子分光 / 原子衝突イオン化 / 立体ダイナミクス / 表面反応 |
Research Abstract |
開殻系原子/分子の電子状態や化学反応特性に関係する知見を得るために、準安定励起原子を用いた衝突イオン化電子分光法を適用して、次のような基礎的な研究を展開した。 低温に冷却した金属基板に吸着した有機分子が開殻系のアルカリ金属によって反応して電子構造が大きく変化する様子を電子分光法によって明らかにした。用いたアルカリ金属原子はナトリウム、セシウム、リチウムの3種類であり、その中ではナトリウムが最も脱水素化反応を促しやすいアルカリ金属原子であり、例えばチオフェン分子とナトリウム原子の組み合わせでオリゴマー化が促されることを見いだしてきた。本研究では、分光法によるスペクトルだけでは明らかにしにくいバンド構造を、衝突イオン化反応の起こりやすさの衝突エネルギー依存性という観点から帰属を決定的なものにした。他には、リチウム原子あるいはセシウム原子によって促されたフラン分子の電子構造の変化に対して、量子化学計算を用いた解析から生成物を検討した。 また、これまで準安定励起原子ビームによる表面イオン化反応で放出される電子の強度が十分でなく、衝突エネルギー分解計測に長く時間を要していたため、表面の清浄性を気にする必要があった。そこで、本年度は電子エネルギー分析器と基板の距離を短くしながら、スピン偏極実験に対応できるように配置を変えるなど全般的な装置の改良を行い、電子信号強度の向上を達成することが出来た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
準安定励起原子ビームによる表面イオン化反応で放出される電子の強度が十分でなく、衝突速度分解計測に4時間程度の時間を要していたため、測定中の表面の清浄性を気にする必要があった。しかしながら、今年度に装置の改良を行い、この電子信号強度の問題は解決できるようになったので、次年度はさらなる進展が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
電子信号強度の向上を目指して、今年度に装置の改良を行ったため、測定時間の短縮と信頼度の向上を達成できるようになった。したがって、今後はこれまでの成果をふまえた上で、準安定励起原子スピン偏極ビームを用いた実験を順次行って新たな成果を得ることを進めていく。
|
Research Products
(2 results)