2010 Fiscal Year Annual Research Report
2次元アンチドット型光格子中の量子気体のダイナミクス
Project/Area Number |
20340106
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 俊哉 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (80452259)
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Keywords | 光格子 / レーザー冷却 / ボース凝縮 / アンチドット / 量子エレクトロニクス |
Research Abstract |
本研究の目的は、2次元アンチドット型光格子内へ量子気体を流し込み、非定常状態や熱的に非平衡な物理状態を生成させ、量子渦生成や量子輸送現象の詳細を解明することである。超高真空の光学セル内で磁気光学トラップを生成・圧縮後、青方に離調した3次元光格子へ5×10^8個の原子集団を誘導した。さらに偏光勾配冷却と光ポンピングを行い、特定の磁気副準位にある4×10^8個の原子気体を生成、7×10^<-4>の位相空間密度を得た。そして、波長1064nmのレーザーによる交差型光双極子トラップへ、10^7個の原子をローディングすることができた。このトラップ中で原子気体の圧縮と蒸発冷却を繰り返し行い、現在、BECの直前、位相空間密度が0.1近くまで増大した原子気体を得ている。アンチドット用の光格子(X、Y方向)のビーム系と、これらとは別に、相対位相の観測専用のビームを各光格子ビームのわずか下に構築した。2本のビームを干渉させて相対位相を測定、折り返しミラーに附置したピエゾ素子に帰還し、YビームはXビームとの位相差を常に維持するよう制御した。この2次元光格子系に、BEC前ではあるが、位相空間密度がかなり高い原子気体を誘導、トラップから解放して原子気体の運動量分布を観測した。相対位相を維持したまま、Xビームを意図的に高速で揺らしたところ、散逸による運動量分布の広がりを観測したが、揺らす速度に明瞭な閾値は見られなかった。また、原子気体の干渉パターンも明瞭ではなく、再現性にもとぼしい。これらは、まだBEC前なので原子気体中にマクロなコヒーレンスが確立していないこと、光格子の相対位相の値が正しくないためと考えられる。後者は、BECが達成されれば明確に定めることができ、現在、全力でBEC生成を目指している。光子系はすでに出来上がっており、BECが生成できれば本研究提案を精力的に進めることができると考えている。
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