Research Abstract |
粘弾性測定では,高沸点溶媒を用いるのが常識であった,しかしながら,低沸点溶媒であってもガラス転移領域まで急冷すれば,粘弾性測定が可能になることを,昨年度の研究により明らかにした,低沸点溶媒を用いることにより,高分子と溶媒分子のダイナミクスを分離することができ,溶液中での高分子のガラス転移を精度よく評価することが可能になった 今年度は,誘電測定を利用して,溶媒のダイナミクスと高分子のダイナミクスがどの程度分離しているか検討した.溶媒の一部を大きな双極子モーメントを持つ分子で置き換え,溶媒の運動を観測し,高分子の分子運動と比較した.その結果,両者が完全に分離していることが明らかになった さらに,ポリスチレンPS誘導体を利用して,分子構造の違いがガラス転移に及ぼす効果について系統的に検討した.PαMSでは,各繰り返し単位の主鎖の炭素原子にメチル基が結合しており,主鎖の回転障壁となり分子内協同性を増大させると考えられる。PtBSでは全てのベンゼン環にter-ブチル基が結合しているため,高分子鎖の並進を阻害し分子間協同性を増大させると考えられる.このため溶液中では,PαMSのガラス転移温度が高く,PtBSはPSと同じ程度になると予想される.しかしながら,実験的に求めたガラス転移温度では,PαMSが最も高く,次いでPS,PtBSとなった.この理由は分子間協同性の低下に加え、40wt%溶液中での主鎖濃度はPtBSの方がPSより低いためであると考えられた。これは,従来の自己濃度の理論では説明できたないものであり,溶液中でのT_gは主として分子内協同性によって決まっていることが明らかとなった
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