2008 Fiscal Year Annual Research Report
液相を含む多結晶体の流動特性および地震波特性に対する実験的・理論的研究
Project/Area Number |
20340117
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武井 康子 The University of Tokyo, 地震研究所, 准教授 (30323653)
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Keywords | 固体地球物理学 / 地殻マントル物質 / 地震波減衰 / 非弾性 / 部分溶融岩石 / 粒界すべり / 多結晶体 |
Research Abstract |
まず、岩石のアナログ物質としての有機物多結晶体の粒径、温度、差応力を系統的に変えて一軸圧縮型のクリープ試験を行い、変形メカニズムを調べた。具体的な成果は以下のとおり。 (1)高差応力(2MP以上)下で変形させることで、転位クリープが実現でき、応力指数4~5の値を得た。粒径は数ミクロン以上、温度は40℃-45℃である。本アナログ物質で転位クリープが実現できたのはこれが初めてである。 (2)粒径が3~5ミクロン程度の細粒試料を用いて、粒界拡散クリープを実現できた。応力指数1、粒径指数3を得た。差応力は0.27MPa、温度は20℃であった。これ以上高温では、粒成長が速く、細粒での定常クリープが難しい。 (3)(2)の実験条件は、別途行っている非弾性測定の実験条件に含まれる。従って、この条件での非弾性データは、粒界拡散クリープの過度的クリープに相当する。弾性のモデルを構築するためには、定常クリープのメカニズムを明らかにした上で非弾性データを取得することが重要であるが、そのようなデータは世界的にも例がない。従って、本研究により貴重なデータが取得できたと言える。また、本研究の成果によって、転位密度が減衰に与える影響を調べるための実験なども可能になった。今後も実験条件をさらに変えてクリープ試験を行い、本アナログ多結晶体の変形メカニズムマップを完成させたい。 所属する研究所の地震学グループと共同で、マントル部分溶融層におけるメルトの存在形態を調べる研究(海洋地域のリソスフェア・アセノスフェア境界における地震波のPSおよびSP変換波を用いる)を行い、メルトが静水圧下での平衡形状から大きく外れた水平互層構造になっているという結果を得た。本研究で明らかにする変形下でのメルトのミクロなふるまいは、このような水平互層構造ができるメカニズムを明らかにする上で重要となる。
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Research Products
(1 results)