2010 Fiscal Year Annual Research Report
液相を含む多結晶体の流動特性および地震波特性に対する実験的・理論的研究
Project/Area Number |
20340117
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武井 康子 東京大学, 地震研究所, 准教授 (30323653)
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Keywords | 固体地球物理学 / 地殻マントル物質 / 地震波減衰 / 非弾性 / 部分溶融岩石 / 粒界すべり / 多結晶体 |
Research Abstract |
地球内部の3次元速度構造から地球内部の温度分布や流体分布を定量的に推定するためには、岩石の非弾性特性の解明が不可欠である。しかし、地震波帯域での実験を高温高圧下で行うことは難しく、非弾性特性については未知の部分が多い。本研究では、地震波帯域を含む広帯域(10-0.1mHz)で試料の弾性・非弾性を精密に測定できる強制振動型の実験装置を開発した。有機物の多結晶体を岩石のアナログ物質として用い、ヤング率Eと減衰Q^<-1>を、周波数、温度、粒径、メルト体積分率の関数として詳細かつ系統的に調べることができた。その結果、多結晶体の減衰スペクトルは、メルトを含む場合も含まない場合も、マックスウエル周波数f_M(E_Uを非緩和ヤング率、ηを粘性とすると、f_M=E_U/η)で規格化された無次元周波数f/f_Mのみの関数として、Q^<-1>(f/f_M)と表される相似則が存在することが分かった。すなわち、多結晶体の非弾性特性は粘性と非常に密接な関係があり、温度、粒径、メルト体積分率はすべて粘性への影響を通して間接的に影響を与えるということが分かった。この結果は、多結晶体の非弾性メカニズムとして、拡散に律速される粒界すべりを強く示唆する。そこで、多結晶体の弾性や粘性の計算に用いられる「粒子状モデル」を拡張して、メルトを含まない場合について、拡散に律速される粒界すべりのモデル化を行い、実験から得られたマスターカーブQ^<-1>(f/f_M)の詳細な形状を再現することに成功した。本研究で得られたマスターカーブは、メルトがない場合については、実際のマントル物質であるオリビン多結晶体を用いた実験のマスターカーブと一致し、多結晶体の非弾性特性の持つ普遍性を明らかにした。また本研究から、従来よりも広い規格化周波数範囲での詳細なマスターカーブ形状が求まった。本実験結果を一般化してマントル条件に外挿し、マントルにおける地震波減衰を予測した。これらの結果をまとめた論文は、2本が投稿中であり、1本が準備中である。
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Research Products
(7 results)