Research Abstract |
本研究の目的は(1)断層帯内部構造の正確な把握,(2)MTLの履歴を明らかにする,(3)断層深部の物性と歪集中や内陸大地震発生とのかかわりを解明することである. 今年度はコアの基本記載作業に基づく断層帯内部構造の正確な把握はほぼ完了した.さらに,この記載結果に基づきコア中の断層岩が被った古応力を求めることで,中央構造線周辺の岩石が塑性変形領域から脆性領域に隆起する過程でたどった変形履歴,また各履歴に対応した断層帯内部構造を明らかにした.この際,当初各履歴に対応した構造の形成温度を,流体包有物解析により求める予定であった.しかし断層帯内部の流体包有物は断層物質の脆さのために回収が困難であった.一方,同様の目的はX線粉末による断層物質中の変質鉱物解析によって達成可能であることからX線粉末による変質鉱物解析を行った.以上により,当初目的としていた,(1)MTL断層帯内部構造の正確な把握,(2)地質学的に重要な課題であるMTLの履歴についてはほぼ目的を達成しつつある. 次に,(3)断層深部の物性と歪集中や内陸大地震発生とのかかわりを解明に向け,今後の基本戦略を立てる上での基礎データとして,断層の歪集中に伴う剪断発熱の痕跡を検証するための,炭質物のラマン分光法による解析,および脆性-塑性遷移条件付近での歪集中過程を明らかにするための,マイロナイト中の石英の結晶定向配列をSEM-EBSDによる解析,歪集中に伴う物質移動を明らかにするための全岩分析を開始した. 断層深部の歪集中過程を観測によりとらえるための基礎研究としての弾性波測定については,測定システムとしては,装置設計とシステム耕地が一応完成したが,細かい調整はまだ必要である.一方,上記記載により中央構造線周囲の断層岩は異なる変形を何度も経験しており,仮に弾性波速度が測定できたとしてもこれが,断層深部の歪週過程を観測によりとらえるための基礎研究になるかには疑問があり,今後の方策の検討が必要である.
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