Research Abstract |
(1)炭素質コンドライトの主要なグループであるCVに属する隕石は含水鉱物をほとんど含まず,その母天体には水はほとんど存在しないと考えられていた。我々は,CVに属するモコイア隕石から8つのコンドリュールと含水マトリックスからなるクラスト(岩片)を発見した。このクラスト内では,コンドリュールが強い水質変成を受け,含水鉱物に変成しマトリックス化している。このクラストの発見は,CV母天体には多量の水が存在する領域があったこと,そしてそこでは大規模な水質変成と衝突による角礫岩化が起こっていたことを示している。 (2)C隕石の衝撃溶融脈については,これまで詳しい報告がない。SEM観察により,エフレモフカCV限石のマトリックス全体に微細な衝撃溶融脈(幅50μm,長さ200μm程度)が存在することを見出した。TEMおよび放射光X線回折を用いて調べた結果,溶融脈は,マトリックス物質が衝撃加熱により完全に溶融した後,カンラン石,Si-Mg-Fe-O非晶質物質,Fe-Ni金属の微粒子が生成して形成されたことがわかった。また,溶融後に生成するカンラン石粒子は,マトリックスのカンラン石(Fa_<54>)よりMgに富み(Fa_<20>),大きさ,形状,内部の転位密度が異なることが明らかになった。 (3)大規模に溶融分化した石質隕石であるエコンドライトの赤外線スペクトルを測定し,天文学的に観測された様々な進化段階にある原始星雲円盤のダストの赤外スペクトルとの比較を行った。始原的タイプと分化的タイプのエコンドライトのスペクトルを様々な割合で混合したものが,進化の初期段階にある星雲円盤のスペクトルと良い一致を示すことがわかった。このことは,星雲進化の初期段階において既に,微惑星の溶融分化そして大きく成長した微惑星の衝突によるダスト形成が起こっていたことを示唆している。
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