Research Abstract |
超短パルスを使った高価な光子源(コヒーレントなX線)の生成のための基盤技術として,分子の整列・配向を制御し,アンサンブルとしての巨大な誘起双極子モーメントを生成する。平成21年度の成果は,(1)偏光条件も最適化しつつ振動・回転状態の同時制御シミュレーションを行った,(2)3次の分極相互作用まで取り入れた800nm+400nm領域における配向制御をシミュレーションした,(3)強散逸系に対する(非マルコフ)マスター方程式解法のための高速シミュレーション開発したことである。(1)においては,時間に依存する偏光条件の下,のベクトル和として制御電場を実質的に強め,制御達成度を高める機構が存在することを数値的に示すことができた。(2)に関しては,研究代表者が知る限り,3次の分極相互作用まで取り入れた初めての最適シミュレーション報告である。また,整列制御と比較して,配向制御はレーザーパルスの位相に非常に大きく依存し,その結果,配向制御の困難さが浮き彫りになってきた。(1)と(2)に関しては機構解析を更に進め,平成22年度前半には論文として成果発表を行う予定である。(3)に関しては,緩和の記憶項を数値計算するには,従来,単なる数値積分が使われてきた。計算量が膨大となるために,応用は極めて単純なモデル系に限られてきた。今回,ある種の積分核に対しては,計算の漸化式が存在することを証明することができた。これを使えばマルコフマスター方程式とほぼ同じ計算量で非マルコフマスター方程式を解くことができる。これを参考に,平成22年度は確率的シュレーディンガー方程式を用いた最適制御シミュレーションへと展開していく予定である。
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