2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20350007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水谷 泰久 Osaka University, 大学院・理学研究科, 教授 (60270469)
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Keywords | エネルギー移動 / 共鳴ラマン分光法 / 時間分解分光法 |
Research Abstract |
光励起により、ヘムタンパク質内のヘムを振動励起し、ヘムから周囲のアミノ酸残基への振動エネルギー移動をトリプトファン残基のアンチストークスラマンスペクトルによって観測した。 1. チトクロムc チトクロムcはトリプトファン残基を1残基含み、かつそれはヘム近傍にあるため、ヘムからのエネルギー移動をプローブする系としては最適である。このトリプトファン残基由来のアンチストークスラマンバンドには、ヘムの光励起後、過渡的な強度増大と減少が観測された。昨年度に予備的な測定を行ったが、今年度はさらにS/N比を向上させた結果、強度増大の時定数はヘムの冷却時定数と異なることが明らかになった。この結果は、モード間の間接的なエネルギー移動を示している。また、ポンプ光波長に依存して、トリプトファンの振動モードにおける励起エネルギー分布が異なることが明らかになった。この結果は、ヘムからトリプトファン残基へのエネルギー移動の時間スケールで、励起エネルギー分布に平衡化が完了していないことを示している。 2. ミオグロビン タンパク質内エネルギー移動の観測に適したミオグロビン変異体を作成した。この試料について測定を行ったところ、チトクロムcと同様にアンチストークスラマンバンドの過渡的な強度増大と減少が観測された。いくつかの変異体では、大腸菌中での発現量が低く、時間分解スペクトル測定に必要な量の試料を作成することができなかった。これらに関しては、培養条件、ベクターの交換など試料調製条件の最適化を行っている。今後は、トリプトファン残基の導入位置を変え、エネルギー移動の速度がどのように依存するかを調べていく予定である。
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