2008 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒パルス励起FT-ESR法によるダイナミックスピン系の解明
Project/Area Number |
20350010
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
河本 敏郎 Kobe University, 理学研究科, 准教授 (70192573)
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Keywords | スピンダイナミクス / 超高速レーザー分光 / ダイナミックスピン系 / 励起三重項状態 |
Research Abstract |
1.電子スピン分極を偏光の変化として光学的に検出する高感度な検出器ポラリメーターを製作した。プローブ光を偏光ビームスプリッターで2つに分けて2つのフォトダイオードで受け、それらの光電流の差をとることにより、1μrad以下のファラデー回転角を検出できるようにした。磁気円偏光二色性を利用する場合は、1/4波長板を通し偏光面の回転に変換してファラデー回転と同様にして検出できる。ポラリメーターにより電子スピン分極の大きさと向きに関する情報が得られる。 2.現有のフェムト秒レーザー再生増幅システムにLD励起Nd:YLFレーザーを増設して、パルス幅100fsec、2波長可変ポンプ-プローブ光源を構築し、ポンプ光の偏光を光弾性変調器でスイッチし、ロックインアンプを用いた高感度検出を行うフェムト秒パルス励起FT-ESR分光システムを製作した。光弾性変調器(50kHz)の位相に同期させてレーザー光を発振(1kHz)させるための分周回路、およびプローブ光の入出力をサンプルホールドして除算規格化する回路を製作し、検出感度の向上を実現した。また、光遅延制御とFFT変換処理を行う自動制御処理システムを製作した。 2.ダイナミックスピン系におけるフェムト秒パルス励起FT-ESR分光の予備実験として、有機分子ベンジルの励起三重項状態に対してピコ秒・ナノ秒領域の過渡吸収測定と時間分解発光測定を行った。吸収測定では項間交差によるナノ秒領域の緩和成分を観測した。時間分解発光測定では蛍光とりん光の検出を行った。発光測定において170K以下で項間交差後のスピン・格子緩和時間を測定し、その温度変化はOrbach processで説明することができた。室温付近でのスピン・格子緩和時間は100ns程度であることがわかった。
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