2008 Fiscal Year Annual Research Report
強い分子間相互作用により束縛された光異性化分子の特異な構造とダイナミクス
Project/Area Number |
20350011
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
関谷 博 Kyushu University, 理学研究院, 教授 (90154658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
迫田 憲治 九州大学, 理学研究院, 助教 (80346767)
南部 伸孝 九州大学, 情報基盤研究センター, 准教授 (00249955)
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Keywords | 電荷移動 / プロトン移動 / 水素結合 / 結晶 / 分子間相互作用 / 発光スペクトル / 3-ヒドロキシフラボン / 励起状態ダイナミクス |
Research Abstract |
本研究は、強い分子間相互作用によって分子が束縛された場合の特異な分子構造や異性化反応について研究することを目的として実施した。平成20年度は、4'-N,N-diethylamino-3-hydroxyflavone(DEHF)と4'N, N-dmethylamino-3-hydroxyflavone(DMHF)の微結晶を作成し、電子スペクトルの観測を行うことにより、分子間相互作用と励起状態ダイナミクスについて調査した。DEHFおよびDMHF結晶においては、それぞれの分子の水素結合2量体が形成されている。2量体構造の違いにより、2種類の結晶構造をとることがX線結晶構造解析から示された。DEHFおよびDMHF分子は極性溶媒中では殆ど同じ蛍光スペクトルが観測されており、二つの蛍光極大は、分子内電荷移動および分子内励起状態プロトン移動に帰属されている。本研究から、結晶状態の蛍光スペクトルは溶液中の蛍光スペクトルと著しく異なることが分かった。結晶状態では励起状態プロトン移動による蛍光が観測されない。最も重要な結果は、DEHF結晶とDMHF結晶の蛍光スペクトルが明らかに異なることである。DEHF結晶からはCT状態から構造のないブロードな蛍光スペクトルが観測されたが、DMHF結晶からは4つのピークをもつ蛍光スペクトルが観測された。DEHFおよびDMHF結晶においては水素結合2量体間に働く弱いファンデルワールス相互作用である。DEHFおよびDMHF結晶と溶液中の蛍光スペクトルの違いは、溶液中では、溶媒分子が再配向することにより、CT状態が安定化するのに対して、結晶では励起された分子の周囲の分子が再配向できない。そのため、励起された分子の構造変化の起こり易さが、DEHFとDMHFでは異なる。DEHF結晶ではジエチルアミノ基の構造変化が妨げられるため、DMHFに比べてCT状態の安定化が小さいことが示された。
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Research Products
(5 results)