2009 Fiscal Year Annual Research Report
強い分子間相互作用により束縛された光異性化分子の特異な構造とダイナミクス
Project/Area Number |
20350011
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
関谷 博 Kyushu University, 理学研究院, 教授 (90154658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
迫田 憲治 九州大学, 理学研究部, 助教 (80346767)
南部 伸孝 上智大学, 理工学部, 教授 (00249955)
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Keywords | 光異性化反応 / 電荷移動 / プロトン移動 / 微結晶 / 電子スペクトル / 分子間相互作用 / 励起状態ポテンシャル / 水素結合ネットワーク |
Research Abstract |
本研究は、結晶中で分子が束縛されているために生じる特異な分子構造が光異性化反応にどのように影響するかについて調査することを目的としている。平成21年度は、4'-N,N-dimethylamino-3-methoxyflavone(DMMF)と4'-N,N-diethylamino-3-methoxyflavone(DEMF)微結晶および2-(2'-hydroxyphenyl)-benzimidazole(HPBI)微結晶の二つの系について調査した。DMMFとDEMFは極性溶媒中では分子内電荷移動(ICT)が生じ、HPBIは溶液中で励起状態分子内プロトン移動(ESPT)が生じる。これらの微結晶の蛍光励起スペクトルと蛍光スペクトルを77-300Kの温度領域で測定することにより、次の新規な情報が得られた。(1)DMMF結晶からは3重蛍光、DEMFからは二重蛍光を初めて観測した。これらのスペクトルは、溶液状態と異なり、シャープなバシドが観測されている。観測された電子スペクトルは、励起状態(S1)において、光異性化座標に沿ったポテンシャル曲線が三極小型と二極小型を取ることによって説明される。(2)溶液中でESPTにより生成したHPBIのケト型は速やかにエノール型に戻る。ところが、結晶状態では、ケト型が安定に存在することが示された。エノール型とエノール型およびエノール型とケト型からなる二量体分子のエネルギーの密度汎関数計算から分子間水素結合が形成されると相対的にケト型が安定化することが示唆された。したがって、水系結合ネットワークの形成がケト型の安定化に大きな影響を与えていると考えられる。このように、結晶状態における特異な分子間相互作用と光異性化が生じる二つの系を発見することができた。本成果は、孤立状態と結晶状態の分子間相互作用の違いを解明するために有用なデータを提供する。
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