2010 Fiscal Year Annual Research Report
強い分子間相互作用により束縛された光異性化分子の特異な構造とダイナミクス
Project/Area Number |
20350011
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
関谷 博 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90154658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
迫田 憲治 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教 (80346767)
南部 伸孝 上智大学, 理工学部, 教授 (00249955)
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Keywords | 電荷移動 / プロトン移動 / 水素結合 / 結晶 / 分子間相互作用 / 蛍光スペクトル / 赤外スペクトル / 光異性化 |
Research Abstract |
HPBI結晶の蛍光分光および赤外分光を行い以下の成果を得た。IRスペクトルの室温から180℃までの範囲の温度変化を行ったところ、NH基が分子間水素結合強い結晶と分子間水素結合が弱い結晶の2重塁があることが分かった。HPBI結晶の励起状態プロトン移動のNH基の重水素置換効果について調査したところ、同位体効果が観測されないことから、励起状態プロトン移動のポテンシャル障壁が小さいか殆ど無いことが示された。顕微IRスペクトルの温度変化からは画期的な情報が得られた。(1)結晶構造は多形で、2個1の構造がある。構造Iにおいては、N基とC-O基は強い分子内水素結合を形成しているとともに、NH基は隣接するHPBI分子のOH基のO原子と分子間水素結合しHPBIは平面的な構造をとる。ところが構造IIにおいては、フェニル環がねじれているため、N基とC-O基の分子内水素結合が弱くなるとともにNH基と隣接する分子との水素結合が切れていることが示唆された。(2)構造Iと構造IIの混合物の蛍光励起スペクトルと蛍光スペクトルを観測したところ、Enol(syn)形とKeto形の構造からの蛍光励起スペクトルが観測され、どちらの構造の吸収帯を励起してもKeto形からの蛍光が観測された。室温より低温の温度変化から、基底状態においてはKeto形がEnol形より不安定であり二つの異性体の分布はBoltzmann分布に従うことが分かった。(3)140度℃より高温では、蛍光量子収率の減少が観測された。IRスペクトルの結果と合わせると、結晶構造Iは構造IIに部分的に転移し、構造IIは構造Iに部分的に転移すること、および構造IIの分子は非蛍光性であることが示唆された。これらの結果は新奇なものであり、結晶状態における分子構造変化と水素結合やプロトン移動についての情報だけでなく、分子構造と結晶構造の転移についての情報を提供するものである。
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