2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20350013
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
立川 仁典 Yokohama City University, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (00267410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前園 涼 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 講師 (40354146)
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Keywords | 多成分系分子理論 / 多成分系密度汎関数法 / 多成分系量子モンテカルロ法 / 陽電子化合物 / 水素結合 / H / D同位体効果 / Colle-Salvetti型相関関数 / 多成分系経路積分法 |
Research Abstract |
我々は現在までに、水素原子核の量子揺らぎや陽電子系にも適用可能な全く新しい第一原理多成分系分子理論を開発し、様々な応用計算を実行してきた。平成21年度は、高精度多成分系分子理論の確立として、核の量子揺らぎと温度揺らぎの両方を取込むことのできる「第一原理経路積分法」の開発と、アルカリ金属水酸化物(LiOH, NaOH, KOH)水和クラスターの計算を試みた。 最も単純なプロトントランスファー系であるH_3O_2にアルカリ金属イオン(M+)が付加した系であるMOH・H_20が最近研究されているが、M+がプロトントランスファーに与える影響についてはほとんど知られていない。そこで「第一原理経路積分法」を用いて、MOH・H_2O(H体)とMOD・D_2O(D体)(M=Li, Na, K)におけるプロトントランスファーのアルカリ金属イオン依存性および幾何学的同位体効果(GIE)を解析した。δLiO(Liの中心からのずれ)は、H・D体共に平衡(EQ)構造付近にダブルピークを示した。それに対し、δNaOとδKOは共にTS付近にシングルピークを示した。このように、温度効果と核の量子効果を考慮することで、NaOH・H_2OとKOH・H_2Oでは、既存の分子軌道計算における不安定なTS構造に相当するδMO=0をとりやすいことが分かった。また、H体の方がD体よりもδMO=0付近で強いピークを示し、明らかな幾何学的同位体効果が見られた。これは、核の量子効果を考慮することにより初めて得られる結果である。しかしながら、なぜ水素原子を含まない構造パラメータδMOは、H/D置換することで、このような分布の違いが生じたのだろうか。酸素間の中央にある水素原子H*の位置を解析したところ、重原子MとH*(D*)は強く相関し、量子効果によるH*(D*)の分布変化に伴いMがその位置を変化させるためであることが解った。
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