2008 Fiscal Year Annual Research Report
軟X線内殻分光による分子間相互作用系の局所電子構造研究
Project/Area Number |
20350014
|
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
小杉 信博 Institute for Molecular Science, 光分子科学研究領域, 教授 (20153546)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
繁政 英治 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 准教授 (90226118)
|
Keywords | 内殻励起状態 / 分子間相互作用 / 軟X線吸収スペクトル / 電荷移動状態 / クラスター / 光電子スペクトル / イオン化ポテンシャル / 交換相互作用 |
Research Abstract |
まず、軟X線に対する透過吸収分光・発光収量用の液体セルを製作し、テストした。実験装置の真空と大気圧相当の液体試料を厚さ100nmの窒化ケイ素薄膜で隔てた。試料入射スリットは1ミクロン幅のものを使って光を切り出した。測定には成功したが、安定に流量を制御しないと放射光による損傷も若干あるため膜が破れることがわかった。流量制御の機構を次年度に向けて検討した。 また、イオン化準位に依存した分子間相互作用の研究を行った。原理は、各準位からのイオン化状態はそれぞれ分子内の電荷分布が異なるために周辺の分子による安定化あるいは不安定化の効果が異なり、イオン化ポテンシャルのシフトに違いが生じることにある。二硫化炭素クラスターの実験結果は定性的に説明できることがわかったが、イオン化に伴うクラスター構造の緩和も含めて定量的な説明ができるどうか、検討中である。 同じ原理で内殻励起状態でのシフト量を実験的、理論的に検討した。イオン化準位のケースに加えて、励起先の空軌道に入る電子の交換相互作用も重要になる。ピリジン分子およびクリプトン原子のクラスターにおける内殻励起の実験結果からクラスター構造の情報が得られることがわかり、論文として発表した。 さらに食塩水中の塩素内殻励起に共鳴させた液体ビーム光電子スペクトルを測定したところ、塩素から周辺の水分子(溶媒)への電荷移動(CTTS)状態の脱励起ダイナミクスを観測することに成功し、論文にまとめて出版した。
|
Research Products
(4 results)