2009 Fiscal Year Annual Research Report
カスケード型シグマトロピー転位反応を活用した生物活性物質の全合成研究
Project/Area Number |
20350021
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
千田 憲孝 Keio University, 理工学部, 教授 (50197612)
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Keywords | シグマトロピー転位 / カスケード型反応 / 連続Overman転位 / アゲラスタチンA / 環状オルトアミド / Claisen転位 |
Research Abstract |
本課題では、隣接した複数の水酸基を有するアリルアルコールを有する基質において、カスケード型のシグマトロピー転位反応を行うことにより、水酸基の不斉を転写しながら、複数のC-C、C-N、C-O結合を短工程で立体選択的に構築する方法論の開発と、本方法論を用いた生物活性物質の全合成を目的としている。平成21年度の研究においては、以下のような成果を得ることができた。 1.カスケードOverman転位を鍵反応としたアゲラスタチンAの全合成:入手容易な酒石酸エステルを出発原料とし、Wittig反応などを利用して直鎖状のジエンアリルジオールを合成した。これをビストリクロロアセトイミデートへ変換し、キシレン中加熱したところ、カスケード型のOverman転位反応が進行し、アゲラスタチンAの隣接ジアミノ部を一段階の反応で、立体選択的に構築することに成功した。さらに転位体はスルホキシドへ導き、Mislow-Evans転位を施すことにより、ジエン-アリルアルコールを合成した。すなわち、3度の連続したシグマトロピー転位により、アゲラスタチンAに存在する隣接したアミノ基-アミノ基-水酸基を導入したことになる。得られたジエンを閉環メタセシスによりシクロペンテノンへ誘導し、分子内アザマイケル反応などによりアゲラスタチンAの全合成を達成し、連続的シグマトロピー転位の有用性を示すことができた。 2.環状オルトアミドを経由するClaisen転位反応の開発:アラビノース由来のアリリックジオールをジメチルアセトアミドジメチルアセタールと反応せしめたところ、環状オルトアミドが生成した。これをモレキュラーシーブス存在下加熱したところ、Claisen転位が進行し、炭素-炭素結合を立体選択的に構築、無保護のアリルアルコール構造を有する転位体を一段階の反応で得ることに成功した。本反応は、ジオール部の保護/脱保護反応を経由することなくClaisen転位を進行させることができるので、きわめて有用な反応である。本反応を利用して、カイニン酸の合成研究を展開した。
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Research Products
(5 results)