2010 Fiscal Year Annual Research Report
カスケード型シグマトロピー転位反応を活用した生物活性物質の全合成研究
Project/Area Number |
20350021
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
千田 憲孝 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (50197612)
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Keywords | シグマトロピー転位 / カスケード型反応 / 環状オルトアミド / Claisen転位 / Overman転位 / カイニン酸 / ブロッソネチンF |
Research Abstract |
本課題では、隣接した複数の水酸基を有するアリルアルコールを基質として、連続的なカスケード型シグマトロピー転位反応を行うことにより、水酸基の不斉を転写しながら複数のC-C、C-N、C-O結合を短工程で立体選択的に構築する方法論の開発と、本方法論を用いた生物活性物質の全合成を目的としている。平成22年度の研究においては、以下のような成果を得ることができた。 1.環状オルトアミドを経由するClaisen転位を鍵反応としたカイニン酸の全合成:D-アラビノースから合成したアリルメシラートにSN2'反応によりプロペニル基を立体選択的に導入した。これをアリルジオールへ変換し、ジメチルアセトアミドジメチルアセタールと反応せしめ、環状オルトアミドを合成した。環状アミドをモレキュラーシーブス存在下加熱したところ、Claisen転位が進行し、アリルアルコールを得た。これにOverman転位を行うことにより窒素官能基を導入、さらに官能基変換を経て、カイニン酸の全合成を達成した。アリルジオールの保護一脱保護を行うことなく、連続した2回のシグマトロピー転位によりC-C、C-N結合を不斉転写を伴って立体選択的にで構築することができる本アプローチは、他の有用物質合成にも適用可能な有用な方法である。 2.オルトアミド型Overman転位の開発とブロッソネチンFの全合成:酒石酸由来のアリルジオールを小過剰のトリクロロアセトニトリルとDBU存在下に反応させたところ、環状オルトアミドが生成した。これをt-ブチルベンゼン中加熱したところ、Overman転位反応が高収率で進行することを見出した。本反応では、アリルジオールの保護一脱保護を行うことなく、不斉転写を伴った窒素官能基の導入が可能である。得られた転位体を用いて、グルコシダーゼ阻害活性を有するアルカロイドであるブロッソネチンFの初の全合成を達成した。
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Research Products
(5 results)