2011 Fiscal Year Annual Research Report
カスケード型シグマトロピー転位反応を活用した生物活性物質の全合成研究
Project/Area Number |
20350021
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
千田 憲孝 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (50197612)
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Keywords | シグマトロピー転位 / Claisen転位 / Overman転位 / カイニン酸 / アクロメリン酸 / カスケード型転位 / オルトアミド型転位 |
Research Abstract |
本課題では、隣接した複数の水酸基を有するアリルアルコールを基質として、連続的なカスケード型シグマトロピー転位反応を行うことにより、水酸基の不斉を転写しながら複数のC-C、C-N、C-0結合を短工程で立体選択的に構築する方法論の開発と、本方法論を用いた生物活性物質の全合成を目的としている。平成23年度の研究においては、以下のような成果を得ることができた。 1.環状オルトアミドを経由するClaisen転位を鍵反応としたアクロメリン酸の合成研究:昨年度までの研究において、糖質から合成したアリルジオールを環状オルトアミドに誘導し、これを加熱することにより、Claisen転位を一度のみに制御することに成功した。得られたアリルアルコールにOverman転位を行うことにより窒素官能基を導入し、カイニン酸の全合成を達成した。平成23年度は本方法論の更なる展開を企図し、アクロメリン酸の合成研究を行った。カイニン酸合成の中間体にピリジン環を導入したアリルジオールにおいて、ジオール部の保護/脱保護を行うことなく、連続した2回のシグマトロピー転位を行い、C-C、C-N結合を不斉転写を伴って立体選択的に構築することに成功した。現在アクロメリン酸の全合成へ向けて検討を続けている。 2.連続的シグマトロピー転位反応の反応条件の最適化:酒石酸または糖質由来の数種のアリルジオールにおいて、ジオール部の保護/脱保護を行うことなく、連続した2回のシグマトロピー転位反応を進行させる反応条件最適化を試みた。その結果、二重結合の幾何異性、置換様式に関わらず、連続的Claisen/Claisen、ならびに連続的Claisen/Overman転位が高収率で進行する条件を見いだした。転位はいずれも完璧な立体選択性で進行することを確認し、この連続的カスケード型シグマトロピー転位が、有用物質合成において、きわめて有効な方法論であることを示した。
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Research Products
(3 results)