2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20350026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大場 正昭 Kyoto University, 工学研究科, 准教授 (00284480)
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Keywords | 強磁性 / 誘電性 / キラリティ / 非線形磁化率 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度までに開発した1次元キラルNi(II)Fe(III)強磁性体PPh_4[Ni(dpen)_2][Fe(CN)_6](dpen=1, 2-(1R, 2R)-及び1, 2-(1S, 2S)-diphenylethylenediamine)のスピン構造について、詳細に検討した。 前年度までに、この化合物が空間群 P1 のキラル1次元鎖構造を有し、3.0K で強磁性転移を示すことを確認した。この化合物の線形および非線形交流磁気応答を詳細に測定すると、3.0K及び2.5Kにおいて異常な磁気応答が観測された。この周波数依存性から、3.0-2.5Kの間で磁気ドメインの応答が大きく変化することが示唆された。この化合物のμSR測定においても、同様に3.0-2.5Kの間で内部磁場の変化が観測された。この挙動の解析から、2.5Kまでは2次元Ising型の磁気構造を、それ以下ではキラルスピン構造を含む3次元秩序構造に相当する臨界指数が得られ、キラル構造の磁気構造への転写が示唆された。磁場中の比熱測定でも、2.5Kと3.0Kにおいて磁気秩序化にともなうピークが観測されたことから、μSRおよび非線形磁気応答における2つの磁気異常が磁気秩序構造の変化であることが支持された。また、昨年度に2次元キラル磁性体の磁気比熱の結果と同様に、磁気転移温度より高い温度でスピンの低次元のショートレンジオーダーが生じていることが分かった。Fe(III)を磁気的に等方的なCr(III)に変えたNi(II)Cr(III)類縁体では、このような磁気異常は観測されなかった。非対称中心構造の構築ならびに磁気異方性の導入によって、Dzyaloshinskii-Moriya 相互作用が働くことで、キラルスピン構造の構築に成功した。今後は、誘電特性の評価を進める。
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Research Products
(23 results)