2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20350028
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
速水 真也 Kumamoto University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (30321912)
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Keywords | 強誘電 / 液晶 / 金属錯体 / 動的電子 / 金属錯体液晶 / 分子デバイス |
Research Abstract |
金属錯体液晶を分子デバイスの観点から見直し、強誘電性金属錯体液晶の材料開発および分子デバイス開発という従来まで例の見ない研究開発を行った。金属錯体液晶を用いた強誘電性メモリデバイスは例がなく、我々の先駆的な研究である。さらに従来までのFeRAMは破壊的読み出しであったが、今回我々はスピンクロスオーバーや混合原子価状態に基づいた非破壊的読み出し機能を有する不揮発性メモリを提案しており、全てのメモリ機能を網羅することが可能となる。また不揮発性メモリでは一般には強誘電材料として無機化合物(酸化物)が用いられている。しかし、強誘電材料の製膜時に、現状の手法では加熱処理が入り、それが基板に影響を与える。強誘電材料として金属錯体液晶を利用し、インクジェット法やミスト法を用いて製膜すれば、加熱処理は必要なく性能改善が期待できる。 スピンクロスオーバー錯体[Fe (bzimpy)_2](BF_4)_2に長鎖アルキル基を導入した錯体[Fe (3C16-bzimpy)_2] (BF_4)_2(1)を合成し、磁気・誘電応答について調査した。錯体1は326Kにおいて結晶-液晶相転移を示した。同時にスピン転移(S=0→S=2)も観測され、これは液晶相転移により誘起されたものであると考えられる。さらにこの液晶相は強誘電性が発現するとされる液晶相である*S_c相に帰属された。誘電測定では、液晶転移により誘電率が上昇することがわかり、自発分極測定において電場に対する自発分極のヒステリシスが観測された。これは強誘電体に特異な性質であり、錯体1が強誘電性を示すことが明らかになった。さらに、錯体1は通常の強誘電性液晶に見られるキラリティやバナナ型構造をもたないため、新しいタイプの強誘電性液晶であることも伺える。
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