2010 Fiscal Year Annual Research Report
反応性メタラサイクルを鍵中間体とする環境調和型革新的環状化合物構築反応の開発
Project/Area Number |
20350048
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 輝幸 京都大学, 先端医工学研究ユニット, 教授 (20211914)
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Keywords | ルテニウム / メタラサイクル / エチレン / 三量化 / イソヘキセン |
Research Abstract |
我々は、これまでに0価ルテニウム錯体触媒Ru(η^6-cot)(η^2-dmfm)_2が、電子状態の少しずつ異なる3種のアルケンを識別し、高選択的かつ高効率で対応する共三量体を与えることを見出し、本反応を利用した新規エナミド誘導体合成法を開発し報告している。そこで本研究では、同じRu(η^6-cot)(η^2-dmfm)_2錯体触媒を用い、第一級アルコール共存下でエチレン単独のオリゴメリゼーションについて検討した結果、高選択的に三量化反応が進行し、直鎖ではなく、分岐のイソヘキセンが最高触媒回転数(TON)189で得られることを見出した。この結果は、既に南アフリカのSasol社が報告しているクロム錯体触媒を用いた反応や真島(阪大基礎工)らが報告しているタンタル触媒を用いた反応と異なり、本反応が7員環のルテナシクロペンタン中間体を経由することなく、5員環のルテナシクロペンタン中間体のみを経由して進行していることを示している。さらに重水素ラベルしたエチレン-d4を用い、1-ブテンとの反応を検討した結果、イソヘキセン-d_<12>ではなく、イソヘキセン-d_4が選択的に得られた。以上の結果から、本反応では、エチレン2分子がルテニウム活性種上で酸化的環化し、ルテナシクロペンタン中間体が生成、ここからのβ-水素脱離反応により、まず二量体であるブテンが生成すると考えられる。さらに生成したブテンとエチレンとの酸化的環化反応により置換ルテナシクロペンタン中間体が生成し、β-水素脱離反応により、イソヘキセンが選択的に得られたと考えられる。すなわち、本反応の成否の鍵は、「反応性ルテナサイクル」中間体の発生法の確立とその反応性の制御である。
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