Research Abstract |
前年度までに,ジメチルシリレン(フルオレニル)(tert-ブチルアミド)ジメチルチタン錯体(1)が高級1-アルケンとノルボルネンのランダム共重合を進行させ,得られたシクロオレフィン共重合体(COC)はエチレンやプロピレンとのランダム共重合体に比べて可視光透過性に優れることを明らかにした.一方,申請者らは,プロピレン重合における1のフルオレニル基上の置換基効果について検討し,2,7-位や3,6-位にtBuを導入した錯体2や3は,より高活性でプロピレンのシンジオ特異性重合をリビング的に進行させ,シンジオ特異性は1<2<3の順で向上することを,さらに,2,3,6,7-位にアルキル基を導入した錯体4では重合活性がさらに一桁向上することを見いだしている.本年度は,高級1-アルケン-ノルボルネンランダム共重合体の最適な合成条件を明らかにすること,ならびに,生成ポリマーの立体規則性が共重合体の物性に与える影響について検討するために,錯体1,2,3,4を用いてノルボルネンとプロピレンならびに1-オクテンの共重合を行い,錯体の置換基効果について詳細に調べた.その結果,いずれの錯体も高活性でランダム共重合を進行させ,活性は,1<2<3<4の順で増大した.特に,4は,プロピレン共重合において1時間1モルチタンあたり約17トンの共重合体を,また,1-オクテンとの共重合でも同約8トンの共重合体与えるほど高活性であることがわかった.プロピレンとの共重合は超高活性であり,共重合反応性の正確な評価が困難なことから,1-オクテンとの共重合について,Finemann-Ross法により各錯体の共重合反応性を評価した.ノルボルネンおよび1-オクテンのモノマー反応性比(r_N,r_0)は,1(8.23,0.42),2(8.19,0.31),3(4.21,0.23),4(6.28,0.50)となった.いずれの錯体で得られた共重合体もノルボルネン含率とガラス転移温度の間には良好な直線関係が認められたが,直線の傾きは錯体により異なることから,共重合体のミクロ構造は錯体の構造に依存することが明らかになった.
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