2010 Fiscal Year Annual Research Report
光誘起異性化反応のX線結晶解析を基礎とした反応空間解析法の確立
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20350068
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
鳥海 幸四郎 兵庫県立大学, 大学院・物質理学研究科, 教授 (90124221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 芳樹 兵庫県立大学, 大学院・物質理学研究科, 准教授 (40204200)
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Keywords | 結晶相反応 / X線構造解析 / 光化学反応 / 薄膜結晶 / 表面構造 / エピタキシャル結晶 / 白金混合原子価錯体 |
Research Abstract |
結晶相異性化反応では、照射光の波長を変化させると反応に関与する励起状態が変化して反応に伴う構造変化も変化すると予想される。X線構造解析によってこのような励起波長の違いに由来する構造変化の違いを直接観測できる可能性があるが、結晶のごく表面で励起光は吸収されてしまい、測定は困難である。しかし、高輝度放射光と表面構造解析法の組み合わせにより、結晶表面から数ミクロンまでの深さの構造解析は可能と考え、表面薄膜結晶のX線構造解析法の確立を目指した。 22年度は、励起光が侵入できる「結晶表面から1ミクロン程度までの領域」の構造解析の実現を目指し、結晶表面にすれすれの角度でX線を入射させて、表面薄膜結晶からの反射強度の測定を試みた。SPring-8 BL13XUにおいて、4ミクロンに集光した8keVのX線を用いてX線回折像の測定を行った。測定には、臭素架橋一次元白金混合原子価錯体の基板結晶表面に、同形の塩素架橋白金錯体を厚さ0.3ミクロン程にエピタキシャル成長させたものを用いた。試料表面に対して入射角0.1゜~0.7゜の条件で、入射角一定の条件で結晶試料を回転させてX線回折像を測定した。この結果、膜結晶と基板結晶からの回折点をブラッグ点の対として観測した。これより、基板結晶表面にエピタキシャル成長した膜結晶は、単結晶に近い結晶性を持ち、膜結晶と基板結晶の方位はほぼ一致していることが分かった。また、測定された各反射点の積分強度を見積もったところ、入射角を大きくするとともに、表面薄膜結晶からの回折X線強度に比べて基板結晶からの強度が大きくなり、予想通りの傾向を示すことが明らかになった。これより、表面層の構造解析の実用化が可能であることが示唆された。今後、試料表面の平滑性の向上と測定方法の改善により、表面層の構造解析法が実現すると期待される。
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