Research Abstract |
本研究では,有機合成化学を基盤として可溶性低分子有機半導体の開発と溶液プロセス有機トランシスタへの応用を目的とする.今年度は,以下の主な成果を得た. 1.可溶性p型半導体材料の開発 高度に共役系の拡張したジナフトチエノチオフェン(DNTT)型分子の可溶化を検討し,長鎖アルキル基を導入した誘導体の合成を行い,その塗布,及び蒸着によるトランジスタ挙動を評価した.その結果,蒸着では最高で8.0cm^2/Vsもの高移動度を再現性良く達成できたが,塗布によるトランジスタでは1桁以上,移動度が低下することが明らかとなった.さらに,新たな拡張ヘテロアレーン型の基本骨格として,従来合成がなされていなかったナフトジチオフェン(NDT)系に着目し,その合成法の開発を行った.4種類の対称性の異なる異性体について選択的合成を確立し,その中の一つの異性体であるナフト[2,1-b:6,5-b']ジチオフェンについて,詳細に調査した.その結果,ジフェニル誘導体において,蒸着により移動度0.5cm^2/Vsを超えるトランジスタ特性が得られた.さらに,この骨格を用いた可溶性半導体開発の一環として,ポリマー型半導体の開発にも着手した. 2.可溶性n型半導体材料の開発 ジシアノメチレン修飾のオリゴチエノキノイド系,縮環型チエノキノイド系の合成と評価を行い,後者において,大気中安定でn型トランジスタ挙動(移動度6x10^<-3>cm^2/Vs)を示す材料の開発に成功した.さらに,ジシアノメチレンに代わる新たな末端基としてシアノアルコキカルボニルメチレン基をもつキノイド系などの合成と薄膜化,薄膜評価,及びトランジスタの作製・評価を行い,種々の誘導体の合成に成功した.これらの誘導体は高い溶解性を持ち,さらにテルオリゴチエノキノイド系において,0.02cm^2/Vsの高移動度を塗布により作製したトランジスタで実現した.
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