2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ複合ファイバーの薄膜化による革新的分離機能の発現
Project/Area Number |
20350098
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
一ノ瀬 泉 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノ有機センター, センター長 (50243910)
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Keywords | 超薄膜 / ナノファイバー |
Research Abstract |
本研究では、無機ナノストランドという極細のファイバーを合成し、その表面を分子精度でコーティングすることで、優れた材料特性をもつナノ複合ファイバーを製造する。また、このファイバーを薄膜化することで、ナノ分離膜としての工学的応用を目指す。さらに、化学プロセスに不可欠な耐久性(熱、酸、有機溶媒に対する安定性)を実現する。これによりナノ薄膜に革新的な分離機能を発現させ、21世紀の人類が遭遇する諸問題を解決することを目指す。 22年度は、精密濾ろ過膜を用いて水酸化銅(または水酸化カドミウム)のナノストランドの水分散液をろ過することで極薄のナノストランドシートを形成させ、このシートを用いて架橋高分子ゲルやポリビニルアルコールなどの水溶性高分子から極薄の限外濾過膜を製造するプロセスを開発した。カチオン性の架橋ゲルの場合、薄膜をアルコールで収縮させた後に再度架橋することで、カチオン性の色素分子を効率的に分離する限外濾過膜が得られた。この場合、色素の分離速度は、市販の限外濾ろ過膜より100倍程度大きい。また、直径2.5ナノメートルのタンパク質(チトクロムC)を100%分離することが可能であった。一方、ナノストランドとポリビリルアルコールの組み合わせでは、有機溶媒中のナノ粒子を高速で分離できる限外濾過膜が得られた。ポリビニルアルコールの場合、グルタルアルデヒドで架橋することで水処理膜として利用できる限外濾過膜が得られ、タンパク質などの生体高分子を吸着させにくい、親水性の濾過膜としての用途に道を拓いた。
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