2008 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体と高分子のハイブリッド化による新規機能材料の創製
Project/Area Number |
20350104
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
渡邉 正義 Yokohama National University, 大学院・工学(系)研究科(研究院), 教授 (60158657)
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Keywords | イオン液体 / イオンゲル / スマートマテリアル / エレクトロウェッティング / マイクロマシーン |
Research Abstract |
プラスとマイナスのイオンのみからなる塩であるにも係わらず室温で液体状態の「イオン液体」が注目を集めている。申請者はこれまで長きにわたりイオン液体と高分子を組み合わせることによる機能材料化に関する研究を精力的に行ってきた。その中でも本研究は特にイオン液体と高分子をハイブリッド化し、温度、光、電場などの外部刺激に応答して形状や集合状態を可逆的に変化させる新規機能性材料の創製を意図するものである。 本年度は温度と光という多重な物理刺激に応じて体積を変化させる新規刺激応答性イオンゲルを実現した。不燃、不揮発性イオンゲルの可逆な体積相転移現象は幅広い温度領域、圧力条件で利用可能な新しい人工筋肉の素材としても有望である。一連の検討の中で本イオンゲルが熱力学的に準安定な特殊収縮状態(メタステーブル状態)に到達することを見出した。刺激の組み合わせによってイオンゲル内部にナノレベルのインターロック構造が形成され、速度論的にトラップされた状態に陥ることが原因であると推察された。興味深いことに特殊収縮状態にあるイオンゲルは光照射により容易に不安定相から解放され、熱力学的に最安定な平衡膨潤状態に到達することがわかった。これは光刺激によるインターロック構造の形成/解除スイッチングひいてはイオンゲルの膨潤収縮メモリ効果を利用した全く新しい機能性素子の実現を切り拓くものである。また、イオン液体を溶媒に用いた高分子溶液(ゲル)に関する従来の研究と今後の展望、未解決の問題等を“相溶系"“相分離系"という切り口で網羅した展望論文をまとめた。 (Macromolecules, 2008, 41, 3739)ここでは液体に内在する複数の方向性を持った相互作用が液体の秩序化を促す事例を挙げ、構造形成性液体(異常エントロピー液体)としての水とイオン液体の類似性を世界に先駆けて指摘した。
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