2009 Fiscal Year Annual Research Report
磁気円二色性分光法による強磁性半導体の電子構造の解明
Project/Area Number |
20360013
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安藤 功兒 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, エレクトロニクス研究部門, 副研究部門長 (90356395)
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Keywords | スピントロニクス |
Research Abstract |
強磁性半導体の典型物質である(Ga, Mn)Asは発見から10年以上が経過した現在も、その電子構造は明らかでない。本研究者が世界で初めて磁性半導体に適用した磁気円二色性(MCD)分光法は、磁性半導体の電子構造解明の有力な手段とみなされているが、低温成長で合成される非平衡物質である強磁性半導体には、通常の伝導バンドと価電子バンドに加えて、磁性イオンによる不純物バンド、そしてアンチサイトなどの多様な欠陥準位が存在するため、MCDスペクトルの解釈は簡単ではない。この点をめぐって、昨年、論文誌上で本研究者を中心とした論争が展開された。その論点は、(Ga, Mn)AsにおいてバンドはZeeman分裂するかどうかという根本的な問題であった。この論争に決着を付けるためには、(Ga, Mn)Asに限定せずに、多様な磁性半導体のMCDスペクトルを詳細に調べ、その電子構造とスペクトル形状の関係を明らかにする必要がある。この観点から、平成21年度は、(Ga, Mn)AsのMCDスペクトルに及ぼすアニール効果の評価と、(Ga, Mn)As以外の各種磁性半導体のMCDスペクトルの測定を行った。 (Ga, Mn)Asのアニール効果に関しては、MCD測定に適したサファイア基板上の(Ga, Mn)As薄膜において、熱処理効による強磁性遷移温度Tcの向上を確認した。サファイア基板上での確認は初めてである。この(Ga, Mn)As薄膜を用いて、熱処理によるTcの向上が、3eV以下のMCDスペクトル形状の変化と対応することを見出した。またCdTeおよびZnTeをベースとする広範な磁性半導体のMCDスペクトルの詳細な測定も行った。これらのデータを用いて、現在、Model Dielectric Function法による解析を進めている。
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