2009 Fiscal Year Annual Research Report
バリア層組成揺らぎを利用した量子構造における弱局在状態の制御
Project/Area Number |
20360021
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
斎木 敏治 Keio University, 理工学部, 教授 (70261196)
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Keywords | 量子ドット / 量子井戸 / 濡れ層 / 局在状態 / 近接場光学顕微鏡 / 活性化エネルギー |
Research Abstract |
InAs/InP量子ドットに対し、その濡れ層における局在状態を詳細に調べ、バリア層組成揺らぎとの相関について議論した。測定に用いた量子ドット試料はInAsの供給量が2.4ML、2.8MLの2種類である。濡れ層局在の起源を明らかにするため、2ML厚のInAs/InP量子井戸試料との比較もおこなった。InAs供給量2.4MLの試料のマクロスペクトル測定より、厚さ1ML、2MLに相当する濡れ層からの発光が確認された。一方量子井戸からは2MLに相当する発光のみが観測された。そこでまず、両者の2ML発光の起源について議論した。その材料として、マクロ発光の温度依存性、ならびに近接場光学顕微鏡を用いた局所スペクトル測定と局所イメージング測定をおこなった。いずれの測定結果も両者の起源が明らかに異なることを示している。量子井戸に関しては、局所スペクトルは常に複数のピークが見られ、またそれらの空間分布は広い領域にまたがっている。これは井戸厚に原子スケールの揺らぎがあることを示している。一方量子ドットの濡れ層発光は、概ね単独のピークが見られ、空間的に強く局在していることがわかった。また温度依存性から、量子井戸発光は数10meVの大きな活性化エネルギーをもち、電子のバリア層への励起に相当している。一方濡れ層発光の活性化エネルギーはずっと小さく、数meVであった。次に1ML厚に相当する濡れ層発光について測定したところ、全体的に2ML厚の発光と非常に類似していることがわかった。量子井戸では1ML厚に相当する発光が見られないこと、ならびに活性化エネルギーが数meVであることから量子ドットと相関をもつバリア層組成揺らぎに起因すると予想される。濡れ層発光の位置が常に量子ドット発光の近傍で見られることからもこの推測が妥当であると判断した。これらの結果はバリア層原子配置による局在量子状態制御の可能性を示唆しており、量子情報デバイス応用に向けて大きな意義をもつ。
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