2010 Fiscal Year Annual Research Report
バリア層組成揺らぎを利用した量子構造における弱局在状態の制御
Project/Area Number |
20360021
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
斎木 敏治 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70261196)
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Keywords | 量子ドット / 量子井戸 / 濡れ層 / 局在状能 / 近接場光学顕微鏡 / 活性化エネルギー |
Research Abstract |
InAs/InP量子ドットに対し、その濡れ層における局在状態を詳細に調べ、バリア層組成揺らぎとの相関について議論した。試料はダブルキャップ法を適用したInAs/InP量子ドット(QD)(InAs供給量2.4ML)および量子井戸(QW)(InAs供給量2.0ML)を用いた。2.4MLはほぼ臨界膜厚に相当する。両試料でほぼ同一のスペクトル形状をもつp3のPL帯(3。0ML層からの発光)に着目し、NSOMによる波長・空間分解測定をおこなった。 それぞれの試料に対し、局所PLスペクトルとPLマップ(空間分解能は約150nm)を測定したところ、QWでは複数の発光起源が空間的に密集しており、InAs/InP界面には細かな層厚揺らぎが存在していることが確認できた。一方、QD試料の濡れ層ではQDとの位置関係によって異なった発光特性を示した。QDから離れた領域では、発光起源の密度が高く、QWとほぼ同様な界面構造であることが予想される。しかし、QD近傍では発光起源の密度が低く、孤立した鋭いPLラインが観測された。これは界面構造がQWと比べよりスムースになったことを示している。これらを定量的に理解するために、ポテンシャル構造をモデル化し、FDTD法を用いて、局在電子・正孔の波動関数を計算した。 さらに両試料のp3帯の発光に対し、マクロPLスペクトルの温度依存性を測定し、活性化エネルギーの見積もりを行った。その結果、QWではキャリアをInPバリアへ熱励起するのに必要なエネルギーが得られたのに対し、QD試料の濡れ層ではキャリアの試料横方向(成長方向に垂直な方向)の閉じ込めの深さに相当するエネルギーが得られた。これは濡れ層ではキャリアを横方向に熱励起できれば、QDまでキャリアが逃げるパスが形成されていること、すなわち平坦な界面が形成されていることを示しており、NSOMによる測定結果を裏付ける結果となった。
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