2009 Fiscal Year Annual Research Report
統計解析と損傷電子センサによる疲労試験不要のシリコン材料信頼性評価体系の創出
Project/Area Number |
20360052
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
神谷 庄司 Nagoya Institute of Technology, 大学院・工学研究科, 教授 (00204628)
|
Keywords | 機械材料・材料力学 / マイクロマシン |
Research Abstract |
研究計画2年目の平成21年度は、より疲労寿命の長い低湿度不活性環境における疲労挙動の調査を重点的に行い、あわせて温度条件を変化させて高温化でも実験を行い、環境の違いによる挙動の差異から疲労機構を推定することを試みた。一定の応力振幅を負荷する通常の疲労試験では特に真空中での疲労破壊が報告されておらず、不活性ガス(窒素)中でも疲労情報の取得は当初困難と考えられた。このため本年度は応力振幅を暫時増加させる全く新しいタイプの疲労試験法を立案して疲労挙動を評価し、これを基に一定振幅下の疲労寿命を推定できることを実証した。この結果、これまで疲労そのものが起きないとされていた不活性環境下でも疲労挙動が観察されること、さらに温度上昇ともに不活性環境下でも疲労寿命が低下することから、シリコンの疲労は表面の酸化膜のみに起因するものではなく内部欠陥の運動により引起され得ることを証明した。これらの成果は2件の学会発表と1件の特許申請として公表されており、さらに論文1件を投稿中である。上記の新しい疲労試験手法は、今後シリコンMEMS構造物の疲労寿命分布を短時間で定量的に把握する画期的技術として発展する可能性を秘めており、本研究で得られた大きな成果の一つと考えられる。 一方損傷の電子的センシングについては、試料が真空環境と大気中とを移動することで損傷(転位)からのDLTS信号に可逆的な変化が現れることが新たに見出された。上記の不活性環境下での欠陥の動きによる疲労可能性の指摘とあわせて、大気中の水分子あるいは酸素分子等の結合により欠陥の電子状態が変化し、機械的な応力に対してより動きやすくなることで、疲労寿命が低下する可能性を示唆する結果と考えられる。これらを応用して実際の疲労過程における損傷状態の変化をセンシングする試みは、次年度以降の課題として持越されることとなった。
|