Research Abstract |
走査型プローブ顕微鏡の一種である摩擦力顕微鏡は,マイクロ・ナノトライボロジー現象解明の中核的計測法である.本研究では,申請者が開発してきた摩擦力顕微鏡用プローブに,新たに駆動機構を付与することで,動的測定及び探針位置の制御を可能とし,動的トライボロジー特性計測法へと発展させることを目的としている. 本年度は,昨年度まで研究を進めてきたプローブ作製法の改良を進め,さらに試作した駆動機構付きプローブを用いて,動的な摩擦力顕微鏡測定を試みた.本プローブでは,静電力で駆動するために,プローブ部と駆動部の狭いすきま(10μmのオーダ)を介して対向する面に電極膜を形成し,静電駆動機構を構成する必要がある.10μmのオーダのすきまを介して電極膜を形成することは容易でなかったので,プローブと駆動部を別々に作製し,組み合わせる構造とした.この際,組み合わせの精度が重要となるが,組み合わせのための微小な凹凸構造を設けることにより,10μm程度の組み合わせ精度を実現した.また,水平方向の変位検出については,前年度までに確立した,プローブ先端に作製した斜面型の微小構造を用いて行った.そして,紫外線照射処理により作製したラインアンドスペース(10μm幅,20μm周期)状にパターン化した,約2nm厚さの潤滑膜を試料とし,作製したプローブにより局所的な動的摩擦特性の取得が可能であることを示した.以上,動的特性と探針位置制御を可能とする駆動機構付きプローブの実現に成功した.
|