Research Abstract |
関節軟骨より酵素消化法により単離した軟骨細胞を,三次元担体であるアガロースゲルに播種した再生軟骨モデルを用い,培養中に加えられる摺動刺激が,培養軟骨細胞による組織内への潤滑機能形成に果たす役割を検討した. 本年度は,摺動刺激負荷実験に先立ち,培地に添加するビタミンC濃度が再生軟骨モデル内における組織形成と,培養後の圧縮剛性に及ぼす影響を詳細に検討し,培地の最適組成について検討した.その結果,従来培地に添加して用いてきたアルコルビン酸の場合,濃度の増加とともに培養軟骨細胞によるコラーゲン産生が促進され,再生軟骨モデルの接線弾性率が著しく上昇することを確認した.高い圧縮剛性を得るための最適アスコルビン酸濃度は3.2pmol/10^9cellsであり,これ以上の濃度では細胞毒性による弾性率上昇の鈍化が認められた.そこで,細胞毒性を抑制した安定化ビタミンCであるリン酸化アスコルビン酸について検討を行ったが,コラーゲン産生促進効果が十分に得られなかった.そのため,今後の摺動刺激負荷実験ではアスコルビン酸3.2pmol/10^9cellsを添加した培地を使用することとした. 昨年度に引き続き,再生軟骨モデルに繰り返し圧縮-せん断変形負荷を与えながら培養する実験を行い,10%の単軸圧縮変形のみを与えた場合と比較し,10%の圧縮変形と5%のせん断変形を組み合わせた繰り返し二軸変形負荷を与えた場合に,3週間培養した再生軟骨モデルの剛性が有意に増加することを確認した.この現象については,再生軟骨モデル内における物質輸送に及ぼす圧縮およびせん断ひずみに伴う移流の影響を明らかにしながら,その詳細に関する検討を継続して行った. また生体関節が具備する潤滑機構について,脂質および蛋白質といった成分の役割を実験的に明らかにし,培養組織内に構築すべき潤滑メカニズムを整理することを試みた.ここで得られた成果については,二件の招待講演を行うとともに,スイス連邦工科大学ローザンヌ校を訪問し,共同研究の可能性について協議した.
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