Research Abstract |
潤滑しゅう動条件下において,しゅう動表面と潤滑剤の「相性」はその摩擦特性に極めて大きな影響を及ぼす.ここで言う「相性」とは,表面の濡れ性,潤滑剤の表面吸着性等を指す.しゅう動面の表面エネルギーを変化させることにより潤滑特性の向上が見込めるため,表面と潤滑剤の相性に関する研究は数多くなされている.しかしながら,物質/潤滑剤界面の状態を微視的に観察した研究はその重要性に反して極めて少なく,中でも,固体表面を潤滑剤に浸漬した状態で直接観察を行った例は見当たらない.そこで本研究では,中性子反射率法を用い,物質/潤滑剤界面の構造解析を行うこととした.はじめに,超平滑なシリコンブロック上に真空蒸着によって約70nmの金属被膜を蒸着した.得られた試料に対して,(1)大気中,(2)ベースオイル(ポリアルファオレフィン)中,(3)ベースオイルに添加剤を混入したもの,の3条件で中性子反射率分析を行った.その結果,(1)と(2)ではプロファイルに変化がなかったが,(3)の場合においては干渉縞の間隔が狭まった.そのデータに対してパラット理論に基づいたフィッティング解析を行ったところ,鉄表面,銅表面ともに,1~2nmの添加剤吸着層が形成されていることが分かった.また,添加剤吸着層の密度は,銅表面のほうが高いことが分かった.なお,同様の条件下で摩擦試験を行ったところ,添加剤の混入により,摩擦係数が大幅に下がることが確認できた.これら一連の結果より,添加剤によって形成される吸着層の厚みは数ナノであるが,それらが潤滑下での摩擦特性に大きく影響を及ぼしていることが分かった.また,これらの結果を受け,京都大学原子炉実験所内に,より簡便に固液界面分析が行えるトライボロジーユース用中性子反射率計を立ち上げた.その測定分解能は1nm以下であり,固液界面分析用として十分な性能を有することを確認した.
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