Research Abstract |
サンドエロージョンは,流体中に含まれる固体微粒子が壁面に繰り返し衝突し,壁面が機械的損傷を受ける現象であり,流体挙動,流体中の固体微粒子挙動,壁面形状変化が相互に干渉して起こる典型的なマルチ・フィジックス現象である.また,サンドエロージョンは,各種流体機械にとって致命的な現象として知られている.航空用ガスタービンでは,型式承認時に安全性確認のための砂吸い込み試験が課されており,一定量の砂を吸い込んでもエンジンが健全に稼動することを実証しなければならない.本研究は,航空用ガスタービンの遷音速ファン動翼におけるサンドエロージョン現象を数値的に再現することによって,その発生原因・物理的メカニズムを明らかにすることを目的としたものである.平成21年度は,平成20年度の研究成果に基づき,遷音速ファンにおけるサンドエロージョン現象の再現を実施した.まず,平成20年度に開発した微粒子の衝撃波通過モデルを現有の3次元コードに組み込み,デバッグおよび動作確認を行った.サンドエロージョンを伴う遷音速翼に関する実験データは存在しないので,コードの動作確認に際してば,最初に,サンドエロージョンを伴わない遷音速ファン(NASA Rotor37)の流れによって流れ場計算部分の動作確認を行った.次いで,サンドエロージョンの実験データが豊富な曲がり管によってエロージョン部分の動作確認を行った.これらの検証計算により,開発したコードが健全に動作することが確認された.最後に,遷音速ファン(NASA Rotor37)におけるサンドエロージョンが数値計算された.この結果,動翼前縁および正圧面に衝突した粒子が遠心力によりケーシング側へ移動し,動翼先端およびケーシングと衝突を繰り返しながら下流へ流されていくため,動翼先端および動翼後縁付近のケーシングが激しいエロージョンを生じることが明らかとなった.
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