2010 Fiscal Year Annual Research Report
普及型重粒子線癌治療装置用超伝導コイルシステム開発のための基礎的研究
Project/Area Number |
20360130
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石山 敦士 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00130865)
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Keywords | 電気機器 / 加速器 / 放射線治療学 |
Research Abstract |
重粒子線癌治療を目的とするサイクロトロン用コイルの超伝導化を目指し、高温超伝導線材の超伝導特性および機械特性の耐放射線性に関する評価実験と、高温超伝導技術を活用した「次世代超伝導サイクロトロン」の提案と試設計を行った。まず、AvF930サイクロトロン(放射線医学総合研究所)を用い、昨年度に引き続き、Bi-2223線材とYBco線材とを試料として14MeV中性子照射実験を実施し、照射前後の超伝導特性の比較を行った。その結果、77kGyx7回(合計539kGy)の照射に対して、超伝導特性(電流-電圧特性)の明確な変化は観測されなかった。つぎに中性子照射による超伝導線材の機械特性に及ぼす影響を評価するため、Bi-2223線材とYBCO線材を試料として、昨年度製作した機械特性評価装置を用い、未照射線材での歪み-臨界電流特性と、中性子照射後(77kGyx1回)の歪み-臨界電流特性を測定し比較した。その結果、0.4%までの歪に対して、中性子照射による超伝導線材の機械特性の変化は見られなかった。以上、本研究の3年間で実施した中性子照射に対する超伝導特性評価実験と放射化による生成核種の分析・調査においては、加速器用線材として致命的な特性劣化等は観測されなかった。高温超伝導線材の耐放射線性に関する報告は世界的にもほとんどなく、ここで得られた実測データは極めて有用と考える。 以上の実験研究と並行して、高温超伝導線材の特性を活かしたこれまでにない新しい加速器設計に基づく「次世代超伝導サイクロトロン」を提案し、本研究課題の最終年度のまとめとして、放射線医学総合研究所のHIMAC(400Mev/核子、300nA)と同等の出力を有する加速器に必要となる超伝導コイルの設計最適化を行い、小型・高効率のサイクロトロン用コイルシステムの実現可能性を示した。
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