2008 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物高温超伝導体における結晶粒界の通電機構の解明と高臨界電流密度化
Project/Area Number |
20360143
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木須 隆暢 Kyushu University, 大学院・システム情報科学研究院, 教授 (00221911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 昌睦 九州大学, 大学院・システム情報科学研究院, 助教 (80346824)
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Keywords | 高温超伝導 / 臨界電流 / 結晶粒界 / 電流分布 / 可視化 |
Research Abstract |
高温超伝導体では、結晶粒界の傾角の増大と共に粒界を透過する臨界電流密度は指数関数的に低下することが知られている。しかしながら、粒界の幅は試料の電極間距離に比べ何桁も小さく、一般に用いられる四端子法によるマクロスケールの測定では、粒内の損失が支配的となる高磁界領域においては、粒間の真の臨界電流密度J_cを検出する事は困難である。本研究では、この点を指摘すると共に、低温レーザ顕微法により電界検出の空間分解能を大きく向上させ、局所的な電流-電圧測定を実現する事により、磁界下の低傾角粒界における電流輸送特性を明らかとした。 試料には、傾角6゜の(001)SrTiO_3バイクリスタル基板上に成膜した人工的YBCOバイクリスタル薄膜を用い、レーザスポットにより数μm程度の領域のみを励起し、電圧計測の空間分解能をμmオーダーに向上させ、粒界部分ならびに粒内での局所的な電流-電圧特性を評価した。両者の定量的比較を行った結果、高磁界下のクロスオーバ領域において、粒間J_cと粒内J_cの差異を明確に捉えることに世界で初めて成功した。このことは、粒界での損失状態が、高磁界領域においてバルクのそれと比べ明らかに異なることを示しており、粒界における量子化磁束挙動を理解する上で、極めて重要な知見といえる。 また、同様のレーザ励起による手法を用いて、レーザ照射位置から粒界での電圧応答が得られるまでの時間差を、ロックイン測定における位相信号より評価し、YBCO薄膜の面内方向の熱拡散率を評価する手法として有効であることを示した。 さらに、微少ホール素子をセンサとして用いた走査型磁気顕微鏡システムを構築し、試料面内の局所的な2次元電流分布を定量的に評価する手法として確立した。本手法により、上述した局所電界のみならず、超伝導試料内の局所電流密度の評価が可能となった。
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Research Products
(23 results)