2008 Fiscal Year Annual Research Report
低電力損失ダイヤモンドパワーダイオードに関する研究
Project/Area Number |
20360147
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
寺地 徳之 National Institute for Materials Science, センサ材料センター, 主任研究員 (50332747)
|
Keywords | ダイヤモンド / ショットキーダイオード / 高耐圧 / 表面終端 / 界面輸送特性 / オーミック電極 |
Research Abstract |
本年度は、ダイヤモンドショットキーダイオードに逆電圧を印加時の振る舞いを、多角的に調べた。特に漏れ電流の原因を明確にし、高耐圧化に関する指針を得る事を中心に研究を進めた。ダイヤモンドに整流性界面を形成する場合、表面/界面の酸素終端が必要であり、本研究では界面を単純化する事で、科学的な観点からダイオード界面特性を評価した。真空紫外線を用いた申請者独自の新しい気相酸化を導入した点と酸化物を形成しない金を電極に用いた点に新規性がある。 形成されたショットキーダイオードは、高耐圧化構造無しでも逆方向電圧1kVでの漏れ電流は最大30pAと極めて小さい値であった。順方向特性から求めたショットキー障壁高さは2.6eVであり、従来用いられている溶液酸化法での障壁高さ(1.5eV)より1.1eVも高くなる事が分かった。これは、ショットキー障壁高さを、金属蒸着前の表面処理により制御できることを示している。 電圧印加後の漏れ電流の過渡応答を調べたところ、電流輸送機構が単純ではなく、結晶中に存在する浅い捕獲準位や深い捕獲準位も漏れ電流に寄与していることが分かった。これらはダイオードを高速応答させる場合に大きな障害となるため、結晶欠陥密度を低減することが実デバイス作製において不可欠であることが明らかになった。 一方で、金を蒸着する前のダイヤモンド表面を水素終端化する事で、熱処理が必要な従来法よりも通電性に優れたオーミック電極特性を、室温形成した。つまり、金属を変える事なく表面終端を局所的に制御する事で、ショットキー/オーミック特性を作り分ける事に成功した。 ダイオードの整流比は8桁以上と大きく、550K(277℃)に昇温した状態でも安定に動作した。これらの結果は、ダイヤモンドが高耐圧・パワーデバイスに適切な材料であることを意味していると同時に、その形成においてダイヤモンドの表面処理方法は優れたデバイス特性を得る上でカギとなる事を明らかにしている。
|