Research Abstract |
重篤な心臓疾患では,心臓壁を構成する心筋細胞に障害が出るが,現状ではその特性変化をベッドサイドで計測できる非侵襲診断装置はない.そこで本研究では,心筋の特性に関する非侵襲的診断法の確立を目的にし,独自に開発してきた非侵襲的計測によって見出した心筋の生理現象に基づき,(1)心電信号に対応する電気的興奮の伝播に対する心筋の応答性,(2)心臓弁閉鎖に伴って発生する心音に対応した機械的微小振動の心臓壁内の伝播速度の可視化の研究を行った. 1. ブタ心臓の狭心症モデルへ適用しパルス状振動が伝播する現象を可視化 東北大学医学部の協力を得て,ブタ心臓の冠動脈にアメロイドを埋め込み,徐々に冠動脈が堰き止められる狭心症のモデルに関して本計測を行った.特に心電信号の伝播直後に,心筋が動く振動が計測された. 2. 健常者への適用 健常者に関して心尖アプローチによって計測した結果を詳細に解析した結果,心電図P波直後に心尖部から振動パルスが発生し,そのパルスが,左心室自由壁を伝播して心基部に到達し,その後,心室中隔壁に伝わって,中隔壁に沿って心尖部まで左心室を1周する様子が可視化された.これは従来の心臓生理学では言及されていない新しい事実と言える.今後,不整脈患者等における伝播経路の異常さの検出などへの応用が期待できる. 3. 心筋梗塞患者への適用 心筋梗塞患者に適用した結果,梗塞部位においては,心1音や2音に対応する機械的振動は伝播しているが,心1音より数十ms前の心電図Q波からR波の間に,健常者では,心電信号が心基部から心尖部に伝播しているが,心筋梗塞患者では,健常部ではその伝播が見られるものの,病変部ではそうした伝播が見られないことが分かった.これは,本研究の目標とする結果が得られたものと考えられ,本研究のパルス状振動が伝播現象の意義を総括できる.
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