Research Abstract |
本研究では,研究代表者が属している研究グループにおいて成果を蓄積してきた独創技術である「光波コヒーレンス関数の合成法」による反射光分布測定法(光リフレクトメトリ)技術に,櫛形スペクトル光源や線形掃引光源も適用可能にし,測定位置の掃引の高速化を実現する.その上で,精密なアポダイゼイションも実施し,新たな位相制御手法と光源に適応したデジタル信号処理手法も開発して,測定速度とダイナミックレンジの両立を実現する.これらの新たな提案の具体化によって,現存の光リフレクトメトリにおける様々な性能制限を打破し,高空間分解能・長測定レンジ,高感度・広ダイナミックレンジ,高精度・高安定かつ高速,といった高い機能を併せ持つ,光ファイバ加入者系ネットワークの診断に十分な光リフレクトメトリを創成する.さらに,本研究で確立する技術により,高機能な分布型光ファイバセンシング技術にも貢献する. 本年度は,前年度に提案した光周波数コム光源を用いた光コヒーレンス領域リフレクトメトリの実証と性能向上を進めている.光周波数コムを用いた光コヒーレンス領域リフレクトメトリの空間分解能と測定レンジは,トレードオフの関係にあり,性能指標である両者の比は光周波数コムのサイドバンド数によって決まることを解明した.そこで,光周波数コムのサイドバンド数を増加する方法として,位相変調器の変調指数を変化させた光周波数コム発生を行い,空間分解能を従来手法の7cmから2cmに向上した.さらに光周波数コムのサイドバンド数を増加する方法として,多重位相変調を用いた光周波数コムの発生を行い,従来のOCDR-OFCの測定レンジを5倍拡大した.また,本手法の導入により,空間分解能向上と測定レンジ延伸の方向性を示し,今後,更なる多重数の増加により,OCDR-OFCの性能向上が見込める.また,光周波数領域リフレクトメトリにおいて,反射率測定精度を向上するために,光源として多波長光源である光周波数コムを利用した波長平均法を提案している.従来の波長平均法では複数回の測定で得たデータを平均する信号処理的手法であるが,本手法は広帯域に発生した光周波数コムをまとめてファイバ中に入射し,光学的な平均を狙ったものである.この手法の有効性を確かめるために、ファイバ中のレイリー散乱点を分割区間ごとからの反射としたモデルを考えシミュレーションを行った.結果より光周波数コムを用いることによりフェイディングノイズ低減されることが示された.加えて,本研究は,ブリルアン散乱を用いた分布型光ファイバセンシング技術の進展にも直接的に寄与している. 本年度の研究成果と関連して,英文学会誌論文5件が掲載され,国際会議発表および国内学会・研究会発表19件も行い,特許権も4件出願した.
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