Research Abstract |
本年度は,昨年度取得した,緑膿菌内の基本的な遺伝子ネットワークにおける実験データをもとに,ハイブリッドシステムモデルの一つである区分的アファインシステムで実際に数理モデルを導出した.またそのモデルを用いて,阻害剤投与量の最適な時系列プロファイルを最適制御問題として解いた.具体的には,以下のとおりである. 1. 緑膿菌の遺伝子ネットワークの中で基本となるネットワーク構造に着目することとし,lasR,rsaL,lasIの3遺伝子のみから成る遺伝子ネットワークにおけるAHL生産の経時変化の実験データをもとに,対応する非線形数理モデルを構築した.比較のため,rsaLが作用しない場合の実験データを用いて,非線形数理モデルの妥当性を検討した. 2. 1.の検討と並行して,より数理モデルの精度を高めるために,病原性因子lasBを使って阻害剤投与時の実験データを取得し,阻害剤の反応までを含む数理モデルを得る試みをしたが,期待通りの結果が得られなかった.また,その理由についても検討したが,現段階でそれを明確に説明するところまで至っておらず,今後の課題となった. 3. 構築した非線形数理モデルを区分的アファイン近似し,数値シミュレーションによって妥当性を検討した後,23モードの区分的アファインモデルを得た.その数理モデルに昨年度開発した最適制御法に具体的に適用し,阻害剤投与の最適なプロファイルを得た.プロファイルは菌体数の増加に比例して加えると効果的であることがわかった. 4. また上記1.2.3.の相補的な研究としての実験やモデル予測制御法の開発などを行った.
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