Research Abstract |
21年度は,人口減少に伴う都市施設の再配置と,住宅地の再開発と撤退,都市アメニティ変化に関して,理論・実証の両面から研究を行った。 (1)人口減少期において郵便局に代表されるユニバーサルサービス拠点の統廃合は不可避であるが,前年度に引き続き,数直線上に人口が一様分布するという仮定の下で,差額地代を原資とするトランスファによる効用水準の維持可能性を検討した。また施設統廃合・再立地に費用が伴う場合について3期間モデルを構築し,取壊費用と施設費用の大小が最適な統廃合・再立地戦略に及ぼす影響を,数値シミュレーションを通じて明らかにした。これらは何れも短期的分析であって,長期的には統廃合に応じて人口の再配置が生じるから,その考慮が今後の課題である。 (2)開放型単一中心都市における住宅地の開発・建替え・撤退に関する動学モデルを構築し,住宅地の空間的立地パターンの変遷について分析した。主な結果として,建替え時の地代が十分に高い(低い)場合,CBD付近の住宅が郊外の住宅地よりも小さい(大きい)ロットサイズに建て替えられること,また一般的な都市ではCBD付近に比べて郊外のロットサイズが大きいが,単位距離あたり通勤費用が小さく,かつ現存のロットサイズがある閾値を下回る場合には,住宅地の撤退はCBDから郊外に向かって進行することが明らかになった。 (3)空間を含む実証研究において,空間自己相関を適切に考慮し得る分析方法の確立は重要である。この観点から,近接行列の表現方法に関してモンテカルロ実験を行い,双方向性の仮定に由来する特定化の誤りがある場合には,空間自己相関項が誤って非有意とされる場合が多いことを示した。また空間的自己相関のある同時方程式体系に関するパラメータ推定方法を開発し,関東地方を対象に,都市アメニティに基づく地価関数と賃金関数の同時推定に関する事例研究を行った。
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