2010 Fiscal Year Annual Research Report
下廃水処理プロセス中バクテリオファージの水処理性能との関連の解明と応用
Project/Area Number |
20360238
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 弘泰 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (90251347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
味埜 俊 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (60166098)
中井 裕 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (80155655)
多田 千佳 東北大学, 大学院・農学研究科, 准教授 (30413892)
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Keywords | 下水処理 / 活性汚泥 / バクテリオファージ / パルスフィールドゲル電気泳動法 / DNAポリメラーゼ / 宿主細菌 |
Research Abstract |
本年度は、次の調査を行う予定であった。1)実験室活性汚泥プロセスの運転状況とファージの挙動の関連性の解明、2)下水処理水に出現するバクテリオファージのメタゲノム解析および外套タンパク質解析、3)ファージの活動とバルク水中にあらわれる宿主rRNAの関係の確認、の3つである。 このうち1)については人工下水を処理する活性汚泥プロセスのリン除去が悪化する際、処理水のリン酸濃度の上昇に先だって、ファージDNAの濃度が高まる時期が見られることがあったが、処理性能にファージが影響を及ぼす事を明確に示すデータは得ることができなかった。また、回分式活性汚泥プロッスにおける上清中のファージDNA濃度の変化を調べたところ、ファージDNA濃度は嫌気条件下ではなく好気条件下に増加する事がわかった。 2)については、実下水処理場の処理水から採取した試料中のファージDNAの精製法を確立するところでやや時間がかかってしまった。最終的には収率50%程度で回収する手法を確立することができた。今後、試料を高速シークエンシング法により分析し、その解析を進めていく。 3)については、純菌系(Salmonellaとそのファージ)を用いて検討した結果、溶菌液中には検出可能なrRNAはなく、また、宿主DNAも一時的に見いだされるが、速やかに分解されることがわかった。すなわち、溶菌液中には高いDNaseおよびRNase活性が見いだされた。しかし、一部の宿主DNAが溶菌液中に一定時間でも検出されたことから、溶菌液中あるいは処理水中にあらわれる核酸を調べる事で溶菌した宿主細菌を特定できる可能性が示されたと言える。 本研究の成果を総括する。PFGE法やRFLP法といったプロファイリング法やファージDNA全量の定量法を導入又は確立することができたし、また、溶菌された宿主を特定する手がかりも、得ることができた。水処理とバクテリオファージの関係について、本研究にて開発された手法・得られた知見を用いてさらに地道に調査を続ける必要がある。
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