2010 Fiscal Year Annual Research Report
力学モデルによる鉄筋コンクリート柱・梁接合部の耐震設計法の確立
Project/Area Number |
20360248
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩原 等 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (50272365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楠原 文雄 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (50361522)
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Keywords | 建築構造・材料 / 構造工学・地震工 / 耐震 / モデル化 |
Research Abstract |
本研究は、鉄筋コンクリート造、プレストレストコンクリート造の十字形、ト字形、L字形などの柱梁接合部に関する、統一的で首尾一貫した力学モデルに基づいた新しい耐震設計法を確立することを目標としてきた。具体的には、力学モデルに基づいて、柱・梁接合部の接合部の補強比を制限し、柱梁接合部の終局モーメントを確保して、接合部の耐震性能を確保する新しい耐震設計法の枠組みとそこに必要な設計式の提案することができた。今年度は、最終年度であり、既に研究を進めてきた柱梁接合部の力学モデルに基づき、十字形柱梁接合部の釣り合いモーメントと十字形柱梁接合部の終局モーメントの算出式に関する1編の論文及び、その算定式を既往の実験のデータベースに適用して力学モデルの信頼性を検証する1編の論文を建築学会の論文報告集に発表した。それに加えて今年度は、ト形柱梁接合部についての既往の実験のデータベースの整備を行った。今年度までの既往の実験データベースの分析より、十字形・ト形によらず、接合部せん断余裕度が1.0を大きく上回っても、せん断余裕度の大きさや通し主筋の付着性能によらず、柱梁曲げ強度比が1.8程度以上ないと明確な梁曲げ降伏型になり得ないことが、理論約・実験的に検証された。また、柱梁曲げ強度比が1.0に近い場合には、接合部アスペクト比、ト形接合部の主筋定着長さ、接合部横補強筋比、柱梁接合部の偏心などが柱梁接合部の強度に大きく影響することを明確にした。つまり、接合部せん断余裕度と通し主筋の付着性能の確保に基づく現在の耐震設計法は、現在の設計慣行において柱梁曲げ強度比の目標値が1.0から1.5であることを考えると不十分であり、特に純ラーメンにおける柱梁接合部の破壊は、避けることはできないことが明らかになったのである。このことは、従来のRC骨組の弾塑性解析の妥当性の再精査と、柱梁接合部の耐震設計法の抜本的な見直しが不可欠であることを明確にしたものであり、研究成果の社会的意義は極めて大きい。
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