Research Abstract |
欧米では,スピーチプライバシに関する研究が古くから行われており,医療施設における音響設計のガイドラインが存在する.しかし,わが国では,このようなスピーチプライバシに関する明確なガイドラインは存在せず,欧米との言語や国民性の違いを踏まえると,欧米で使用されているガイドラインがそのまま日本においても適用できるかは明らかではない.平成22年度は,日本におけるスピーチプライバシの評価方法を明らかにする事を目的とし,プライバシ感と音響物理指標の関係について詳細に研究した.まず,プライバシ感について,従前は「個人情報が保護されていると感じるかどうか」と定義されていたが,実際の医療施設において利用者が感じる感情とはいえなかった.そこで,直感的で利用者が共感できる感情を明らかにするために,社会人を対象としたアンケート調査を行った.待合室において診察室から会話が漏れ聞こえる状況を想定させ,その状況下で感じる感情として,興味を持つ,不快,不安,落ち着かない,恥ずかしい,不満,腹立たしいの7つの内,どれに共感するかを回答させた.その結果,「不満」が最も共感される感情であることを明らかにした.次に,アンケート調査と同じ状況を再現した音場で聴感実験を行い,漏れ聞こえる会話の音圧レベル及び暗騒音レベルと「不満に感じる割合」の関係を明らかにした.さらに本年度の研究成果と前年度に研究した単語了解度を比較し,単語了解度を20%以下にすれば,不満に感じる割合を閾値(50%)以下にできることを明らかにした.
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