Research Abstract |
Ni-Mn-In系合金バルク材では,Co添加に伴いマルテンサイト変態温度(M_s)は低下し,キュリー温度(T_C)は大幅に上昇し,弱磁性マルテンサイト相(M相)から強磁性オーステナイト(A相)と変態する領域が高温側に広がることが報告されている.そこで,本年度は,Coを添加したNi-Mn-In合金に注目し,本合金をスパッタ法により薄膜化し,得られた膜の構造と磁気特性に及ぼすCo添加の影響について調査した.Coを添加したNi-Mn-In合金薄膜は,Ni_<45>Mn_<40>In_<15>合金と純Coの2種類のターゲットを用いた2源同時スパッタ法により作製された.合金ターゲットのスパッタ電力は200W(RF)一定とし,Coターゲットでは0~20W(DC)と変化させて,Co添加量を0~8.4mol%と変化させた.得られた薄膜を基板から剥離した後,1173Kで3.6ks間の熱処理を施した.成膜したままでは非晶質構造を示し,熱処理に伴い4mol%Co以下のCo添加Ni-Mn-In合金薄膜ではM相,6mol%Co以上のものではA相に起因した回折ビークが確認され,Co添加量の増大に伴いマルテンサイト変態温度は低下することがわかった.また,熱処理を施した各Co添加Ni-Mn-In合金薄膜の熱磁化曲線より,Co添加量の増大に伴いキュリー温度は上昇することがわかった.また,6mol%Co以上では,典型的な強磁性体の挙動を示し,4mol%Co以下では,M相の磁化は非常に小さく,マルテンサイト変態に起因して大きな磁化の変化(弱磁性M相から強磁性A相への変態)が現れた.2mol%Co熱処理膜では,磁場印加に伴うマルテンサイト変態温度の低下は約1K/Tであり,磁場印加に伴いA相が安定化されることがわかった.一方,8.4mol%Co熱処理膜ではM変態に起因する磁化の変化は見られず,室温以下では強磁性相であった.さらに,2mol%Co熱処理膜について,強磁場XRD装置(HF-XRD)を用いて,磁場0および5Tにおける加熱・冷却に伴う結晶構造の変化を評価した.いずれの磁場でも加熱・冷却に伴うマルテンサイト変態が現れ,加熱・冷却に伴うマルテンサイト変態温度は,5Tの磁場印加に伴い低下し,A相が安定化されることが確認された.
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