Research Abstract |
純アルミニウム(99.99%Al)を対象に,8パス,BcルートでECAPしたsamples(ECAP sample,粒径〜2μm,ビッカース硬さHV=37)とその後3水準の温度で1時間焼鈍したsamples(annealed samples,粒径〜6,30,100μm,HV=31,25,25)を対象に,円柱圧縮試験(0.01/s,室温)を実施した.圧縮加工で導入された相当ひずみε_<eq>は有限要素解析で予測し,圧縮後のsamplesについて,HV測定と組織観察(EBSD,TEM)を行った.圧縮条件が同じでも,材料内に蓄積するε_<eq>の不均一性と大きさは初期結晶粒径によって大きく異なり,これは各sampleの応力-ひずみ線図の相違に基づくことを明らかにした.ECAP sampleのHVは,ひずみの増加と共に減少し,ε_<eq>=2.0でほぼ一定となる.この結果は,4パス以降でHV一定を示すECAPの過去の結果と異なる.これは,加工のモードをdrasticに変更した影響である.EBSDによる組織解析の結果,Kernel average misorientation(KAM)はε_<eq>=0から2まで減少し,2以上でほぼ一定であった.KAMの値は,local siteにおけるひずみ(転位密度)を意味し,TEMによる組織観察から転位密度の減少が確認された.一方,annealed samplesのHVは,過去のECAPの結果と同様な硬度変化(ε_<eq>とともにHVが増加し最大HV後軟化し,HV37で一定値)を示したが,初期結晶粒径d_0に強く依存した.d_0が小さいほど,最大HVおよびHV一定を示すε_<eq>の値は小さくなり,d_0が微細粒組織創成に重要なパラメータであることを明らかにした。この硬度変化のd_0依存性は,微細組織の形成過程の違いによって引き起こされたことをEBSDによる組織観察結果から明らかにした.なお,全てのsamplesに共通して,ε_<eq>の増加と共に結晶粒は扁平となるが,1μm以下にはならず,軟化が進むにつれ結晶方位の変化が観察された.また,有限要素解析で算出されたε_<eq>から試験断面上における硬度分布を予測したところ,実験後に測定された硬度分布と良く一致した. 低炭素鋼の温間域での1パス圧下試験も行い,初期結晶方位が微細粒形成に大きな影響を及ぼすことを数値解析と実験を結合した研究から明らかにした.
|