Research Abstract |
"多パスプロセスによる粒径支配因子解明およびひずみ履歴と集合組織の関係構築"として,低炭素鋼を対象に,温間域での多パス溝ロール圧延を実施した.三次元有限要素シミュレーションによって変形解析を行い,相当ひずみや各ひずみ成分の履歴を定量的に予測し,13パス(◇7.9mm)圧延で,断面中心に3.5の相当ひずみが,コーナー近傍で5.9の相当ひずみが蓄積することを示した.その後,6パス(◇15.8mm),8パス(◇12.9mm),13パス圧延後(◇7.9mm)の棒断面組織をSEM, EBSDを用いて解析し,ひずみと組織(粒径,方位など)の関係を定量的に検討した.棒断面上の観察結果から,RD//<1110>が優先方位の領域(中心から1/4tの広い領域),RD//<113>が優先方位の領域(4側面の近傍),そして優先方位を持たないランダムな領域(4コーナー近傍)の3つに分類され,これらの領域における組織は,ひずみ量ではなく,ひずみの履歴による相違によってもたらされることを明確にした.また,5.7以上の大きな相当ひずみが導入された13パス後のコーナー近傍(方位ランダム領域)のフェライト粒径は,約680nmであった.その後,温間多パス溝ロール圧延で創成した棒鋼の強度,延性,衝撃特性についての検討を行った. また,低炭素鋼の温間域での1パス平面ひずみ圧下試験も行い,同じ相当ひずみ2.0が導入されたsiteでのせん断変形の有無による微細組織形成の違いを定量的に検討した.その結果,せん断変形が付与されたsiteの組織は,様々なすべり系が活動し,結果的に大傾角化の割合が高くなり,微細組織形成に有効であることが分かった.
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