Research Abstract |
2年度目である今年度は,昨年度の成果で得られた効果的なマイクロジェット噴射法に関して更に詳細な実験を行い,騒音低減メカニズムの解明を目指した検討を行った。ノズル出口よりも上流のノズル内部で,壁面から主ジェットに対して90°の角度でマイクロジェットを噴射する方法により,主ジェットの0.5%以下の少ない流量で,5dB以上の大きな騒音低減効果が得られることが分かった。シャドウグラフ法による流れの可視化画像を詳細に解析した結果,ジェット剪断層の混合が促進される様子や,ポテンシャルコアが短くなることが明らかになり,更にジェット内部でセル構造を形成する衝撃波が安定化されることが見出された。実験と並行して,昨年度開発した流れの数値解析手法を適用し,マイクロジェット噴射による流れ場の変化をシミュレーション結果から考察した。まず実験で計測したジェット内部の圧力分布を数値解析結果と比較したところ,両者はよく一致することが分かり,開発した数値解析法の妥当性を確認することができた。続いて数値解析結果から,ジェット内で生じる衝撃波の強度がマイクロジェット噴射により増大し,同時に安定性が増して,衝撃波の振動が大幅に抑制されることが分かった。これらの流れ場の変化が,ジェット騒音のうち,特に衝撃波関連騒音成分が低減されるという,これまでの実験結果の原因となっているものと思われる。一方,マイクロジェットを非定常で噴射する装置を新たに製作し,振動的なジェットを噴射させて,いわゆるシンセティックジェットを作り出し,主ジェットに当てる実験を試みた。その結果,騒音の一定の低減効果は得られたが,定常ジェットとの減音特性の比較など詳細な検討には至っていない。以上の研究により,小流量で騒音抑制効果の大きいマイクロジェット噴射方法の指針が得られるとともに,減音効果の物理的なメカニズム解明の手がかりを得ることができた。
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